雲上ブログ〜謎ときどきボドゲ〜

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久しぶり

 に、超短編を書きました。と、それを公開する前に。
『死にたいは、生きたいだ』
 涙が流れるほど悔しいが、その通りだ! 死にたいは……生きたいだ!
 では、久々に書いた超短編。どうぞお読みください。

「たとえっ! 闇が地上を覆い尽くし、明日ッ、世界が滅びるのだとしても……」麦藁帽子を被った男が突然、大声を出した。往路を歩いていた人々は、男を見て後ずさった。
「私は庭に林檎の種を植え、育てようとするだろう……」
 男の両腕が強く握り締められる――『激しすぎる怒りは、その人自身を傷付けるだろう』――男の腕を鮮烈な赤が伝う。見開かれた男の瞳は、哀しみの色に染まり、すぐそこに迫っていた終焉は、僅かに慄いた。だが、しかしその程度のことで死神は、躊躇しない。ただ、己の仕事をこなすのみ。鎌を振り上げ、振り下ろす。とても簡単で、易しい仕事。
 死神が大鎌を振り上げる。
 男が両手を広げる。その手に……林檎が握られている。「救世主、俺には永遠に科せられることのない罪状、名誉の欠片もない死ッ」男は両手に握った林檎を口にした。死神が鎌を振り下ろす――
――、男はそれを受け止める。林檎の欠片が地面に落ちる。芽が出る、育つ、花が咲く。
 旅行に来た少女が、たくさんの林檎を実らせた大木を見上げる。そのとき枝が大きく揺すぶられ、幾つかの林檎が落ちてきた。少女は目を丸くする。日焼けした少年が枝の上で、少女に手を振っていた。
PLANTER『終わらない』505文字