雲上ブログ〜謎ときどきボドゲ〜

オススメの謎解き&ボードゲーム&マーダーミステリーを紹介しています

798

素数の音楽 (新潮クレスト・ブックス)

素数の音楽 (新潮クレスト・ブックス)

 新潮クレスト・ブックスというシリーズがある。ジャンルに関係せず、海外の優れた作品の邦訳していっているものだ。実は本書を読むまで、秋山はこのシリーズが小説でのみ構成されている思い込んでいた。したがって本書も「数学、中でも素数を取り扱った作品」と聞いて、『博士の愛した数式』のようなものを想像していたのだ。しかも「数式や公式が苦手な人でも読める」「最後まで読んで感動した」などの評もあって、すっかり小説だと思い込んでいた。実際はノンフィクションである。『ソフィーの世界』のように数学史に名を残す学者を順々に紹介しつつ、彼らの数学への挑戦をエッセイ風に描いている。あえて小説風に表現するなら素数版『ベルカ、吠えないのか?』。素数よ、素数よ。お前はどこにいる?
 白状してしまうと面白くなかった。小説だと思い込んでいたこともさることながら、数学や素数に対する強い興味がなければ、読み進めることが困難なのだ。何故なら、基本的に数学賛歌を挟みながら、様々な数学者とその業績を紹介しているだけの本なのだ。公式を見れば無意識に目を背けてしまう秋山に、これ以上、向いていない本はないだろう。しかも長い。ただしリーマン予想を巡る数学者たちの軌跡に興奮を見出すならば、本書以上の作品はないかもしれない。