- 作者: 加納朋子
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2000/05
- メディア: 文庫
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加納朋子はこれで五冊目だけれど、ちょっと今まで読んできたのとはかなり違った作風で始まっている。あまりに詩的過ぎるのだ。この詩情世界に浸れる人なら、のっけからテンション高く読めるだろうが、自分は駄目だった。延々と女性主人公の心情とも、感情の吐露ともしれない何かが、過剰に装飾されてつらつらと書かれているのだ。冷静に考えて、こういうのが好きな人には堪らないかもしれないが、そうでない人は拒絶反応を起こしてしまう。
けれど、段々と文章も落ち着いてくるし、物語らしきものも見えてくる。そうなると、どうしてこれまで詩的な文章だったのか、その理由も分かるし、色々なことに納得できる。説明が難しいが、本書は本来はひとつの大きな物語なのだけれど、それがある理由から細かく裁断され、断片となってしまい、それを寄せ集めたようものなのだ。したがって理解するのに、読者側にある程度の能力が要されるが、一度、物語の再結合に成功すれば、途端に魅力的に見えてくる。特に、物語が断片化されている理由が素晴らしい。このテーマをストレートに受け止めることが出来るのは、やはり女性読者だろうが、これは是非、男性読者にも読んでもらいたい。序盤が辛いけれど。いや、面白かった。