- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2006/03/07
- メディア: 雑誌
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吉田知子「野良おばけ」初っ端から分からなかった。だいぶ読み進めてから、どうやら主人公は比喩でなく本当におばけらしいと分かったのだが、だから何? と首を傾げてしまう。ふわふわと漂っているような筆致が面白く、最後の犬と戦うシーンなどは印象的なのだが、それ以外が今ひとつ。
中山智幸「王さま消えたその後で」前々から気になっていた作家で、ここで読むことができて嬉しい。何故か「古川日出男みたいな文章を書く人」と思い込んでいたが、全く違っていた。ややミステリタッチで続きが気になり、ぐいぐいと読めてしまう。何処となく、雰囲気が絲山秋子に似ているかもしれない。面白かった。
寺坂小迪「シャルル・ド・ゴールの雨女」タイトルや出だしが陰鬱としていて、どうしたものかなあと思いながら読んでいったところ、予想外に面白く、また完成度も高いように感じた。ジャングルジムの中に隠されている彫刻というのが、また魅力的なガジェット。
桑井朋子「腹中花」四作の中ではこれが一番、ありきたりかもしれないと思った。語られているテーマが使い古されたもので、ひとつひとつを取り上げても、あの作家の方が上手く扱えていたなあと他の作家名を思い浮かべてしまい、またそんな自分に溜息。