- 作者: 倉知淳
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1999/08/10
- メディア: 文庫
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本書ではご丁寧に「主要登場人物が出揃う。後の被害者も犯人も無論この中にいる。管理棟の構造は終盤の推理で重要なファクターとなるので、注意が必要である」であったり「コテージの前で和夫は思わぬ立ち聞きをする。これは純然たる偶然であり何者の作為も働いていない。この時和夫は大きな思い違いをするが、それについては後になって判明する」といった作者からのヒントと言うか、アドバイスのようなものが挿入されているのだ*1。とは言え、この文句は別段、作者からのメッセージであるといった表記はない。仮に嘘偽りのないヒント・アドバイスであったとしても、どこかに恣意的な操作が紛れ込んでいたとしても不思議ではない……と! 分かっていたのに! 見事に裏をかかれた騙された悔しいー!!
とにかく本書の肝は解決編にあると言えるだろう。あの巧みな語り口と、答えが明かされた瞬間に感じる、世界が瓦解する感じ。麻耶雄嵩の崩壊感を、より本格風味に仕上げた作品だった。絶品。
*1:句読点引用者