第135回芥川賞候補作となった「点滅……」を読んでみた。中原昌也は前々から読んでみたいと思っていたのだが、人に聞いても「中原昌也でオススメの作品はない」と言われて困窮していたので、今回、候補作になってくれたのはいい機会だった。
という感じで読んでみたのだが、驚くほど後に残らない。まるで左の耳で聞いた内容がそのまま右の耳から抜けてゆくかのようだ。場景が目まぐるしく変わるので、すぐに何の話をしていたのか分からなくなるし、しかも殆どの情報がどうでもいいものとして扱われているので「あれ、なんの話をしてたんだっけ? 少し戻ろうかな。でも、まあ、忘れたってことはどうせたいしたことじゃないだろう。とりあえず読み進めよう」と、じゃんじゃか読んでいるうちに終わってしまった。面白い面白くない以前に、内容をほとんど記憶していない。中盤「書くこと」について論じているあたりは、まあ、面白かったけれど『クリスマス・テロル』を書いていたころの佐藤友哉と比較すると全然だなあ。っていうか、佐藤友哉はもう芥川賞、無理なの?