雲上ブログ〜謎ときどきボドゲ〜

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1028『どんがらがん』

 ふう、じっくりと時間をかけて堪能させていただいた。
 奇想コレクションの七作目、十六編の中短編からなる作品集。
 解説で殊能将之が、アヴラム・デイヴィッドスンの著作をして「変な小説」と称していたが、まさしく変な作品ばかりであった。変な作品ではあるが、ただ単に変で捻くれているのではなく、正当に変なのだ。説明が難しい。現実の世界から生きる我々からすれば、奇妙に歪んだ世界が物語の中で展開されているのだが、恐らくは、物語の中の登場人物からすれば、その世界は別に変でも奇妙でもない通常の世界なのだ。彼らにとってその世界こそが、現実であり、通常なのだ。故に、現実の世界に生きる我々には、落ちがよく分からない作品もあるのだが、とにかく雰囲気がいいのだ。
 気に入ったのは「物は証言できない」「さあ、みんなで眠ろう」「さもなくば海は牡蠣でいっぱいに」「尾をつながれた王族」「サシュヴラル」「眺めのいい静かな部屋」「グーバーども」など。特に気に入ったのが「さあ、みんなで眠ろう」、とても物悲しい。
「サシュヴラル」は極めて技巧的で、ミステリ的な技法を用いつつもそうではないというトリックが素晴らしい。「尾をつながれた王族」は松本楽志さんが書いた超短編を、短編用に書いた作品のように思った。