雲上ブログ〜謎ときどきボドゲ〜

オススメの謎解き&ボードゲーム&マーダーミステリーを紹介しています

1033『サマー/タイム/トラベラー 1』

サマー/タイム/トラベラー (1) (ハヤカワ文庫JA)

サマー/タイム/トラベラー (1) (ハヤカワ文庫JA)

 新城カズマは文体に癖があって、苦手だ。本書の外伝も『SFマガジン』のリアル・フィクション特集の号に掲載されたときに、頭の方だけ読んだのだが、あまりの独特さがまったく受け付けず、すぐに投げてしまった。したがって、本書は恐る恐る読み始めた。しかし、意外や意外、読めた。
 登場人物の立ち位置は一昔前にはやったものを踏襲しており、ジュブナイルと呼ぶに相応しい雰囲気を帯びている。鶴田謙二のイラストが実にマッチしている。加えて、登場人物がいつも集う喫茶店の名前が「夏への扉」であったり、その店にいる猫の名前がピートであったり、ジェニィであったり、はては時間物をその系統によって分類したマップが唐突に出てきたり、SFファンの魂をくすぐるのではないかと思う。本書を機にタイムトラベル物に興味を持った読者向けにか、ブックガイドとしても使えるため、資料的価値も高い。話の展開が遅いわりに、回想形式を取っているため、結末を示唆する科白もあり、なんとなく読めてしまう。意表を突いてくれると嬉しい。
 しかし、それにしても、ミステリ畑の人間からすると、本書のネタバレっぷりは甚だしい。