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1042『デス博士の島その他の物語』

デス博士の島その他の物語 (未来の文学)

デス博士の島その他の物語 (未来の文学)

「島医者もの」三部作と呼ばれる「デス博士の島その他の物語」「アイランド博士の死」「死の島の博士」に中編の「アメリカの七夜」と「眼閃の奇跡」、そして「まえがき」からなる中短編集。
「デス博士の島その他の物語」は割り合い短く、ノスタルジックとも言える雰囲気にメタフィクショナルな仕掛けが絡み合っていて、秋山が『デス博士』に対して抱いていた先入観をやさしく打ち砕いてくれた。とても変なのだ。真っ当なSFとは言えず、未来の文学からよりも、奇想コレクションから出てくる方がよっぽど自然なほど。
 特に気に入ったのは「アイランド博士の死」。箱庭に住む限られた登場人物と、彼らが暮らす島=彼らにとっての全世界=博士、という構図がどうしようもなく魅力的。終盤のシーンなどは、字面から飛びでてくる雷に身を打たれるのではないだろうかと心配してしまった。「眼閃の奇跡」も悪くなかった。と言うか、ふつうに素晴らしかった。気になるのは「アメリカの七夜」。七日間の滞在+手記に残された六日間+七つのお菓子(うちひとつは幻覚剤入り)、とキーワードを羅列するだけでもこの作品の魅力は通じるのではないだろうか。深く読み込んでないので分からないが、恐らくは解が存在しないことが解ではないだろうか。面白かった。が、少し難易度が高かった。