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1057『夜の歌』

夜の歌 (小学館文庫―藤田和日郎短編集 (ふD-21))

夜の歌 (小学館文庫―藤田和日郎短編集 (ふD-21))

うしおととら』と『からくりサーカス』で知られる藤田和日郎のデビュー作を含む短編集。
 気に入ったのは「からくりの君」と「夜に散歩しないかね」。前者は加当段蔵が幻術を使うシーンに首を傾げたが、読み返して、つまり人形たちを操っている蘭菊こそが「おれは見たことのあるものしか、幻にはできませぬ」という科白における「見たことのあるもの」だったわけかと膝を打った。うまく出来ている。
 後者は大正が舞台で、なんだかいかにもな登場人物がいかにも物語を展開させているのだが、「夜と対決してやろうと思ったんです」という科白のあたりから加速する。悪夢が伏線であったり、いくつかのシーンにはかなり目を見張るところがあって素晴らしい。もう少し動機に焦点があたっていたら面白くなっていたように思う。操りとか。