- 作者: 郁雄吉武
- 出版社/メーカー: 文芸社
- 発売日: 2006/08
- メディア: 単行本
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ストーリィという点に着目するなら、SF・アクション・青春・巨乳という、どれかひとつだけで長編小説が書けるテーマを平等に追い求めてしまっているために、やや垢抜けない感じになってしまっている。しかし、設定という点においては申し分ない。グレッグ・イーガンを意識させる世界観ではあるが、〈平成日本〉と〈昭和日本〉と〈大正昭和日本〉が同時に存在し、それぞれの世界へ領域移動できるというのは最高に斬新だろう。特にヴァリアブルス条約機構のエージェントである中島近恵という登場人物は、この複数の時代が同時代的に存在する世界観を的確に表している。彼女はいわゆるアンドロイドであるにも関わらず〈大正昭和日本〉の世界においてある男性と結婚し、彼が死ぬまで結婚休暇として主婦業に専念したのだ。彼女のの言葉の端々から、世界観の深みが感じられた。
巨乳萌えよりドジっ娘アンドロイド萌えにこそ勧めたい。
(追記)著者が中島近恵特集を組まれました(公式の2006年10月4日付け日記)。