雲上ブログ〜謎ときどきボドゲ〜

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1130『ピース』

ピース

ピース

 連続バラバラ事件の発生により浮き足立つ秩父の田舎町。寂れたバーの片隅で、ジュークボックスが一昔前の音楽を流す中、事件は静かに穏やかに進行する。
 ここ数年、年一回のペースで作品を上梓している樋口有介の最新刊。今回はだいぶミステリを意識した作りになっていて、登場人物のミステリアスさや、事件の凄惨さ、結末で明かされる真相など、かなりミステリを意識しているように感じられた。けれどもやはり樋口有介の魅力はそういったジャンル小説的なところにあるものではなく、雰囲気に尽きる。少しでも長く彼の文章を読んでいたい、少しでも長くこの世界観に浸かっていたい、そう読者に思わせる魅力を彼の文章は湛えているのだ。来年の冬が実に待ち遠しい、早く彼の新作が読みたいと思う。