- 作者: 笙野頼子
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2005/06/21
- メディア: 単行本
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実はこの論争を秋山は知らなかった。群像が妙な方向に向かっていることや、某評論家が雑誌から雑誌へと、まるで何者かから逃げるように連載の場を移していることは、なんとなく分かったが、そこに因果関係を見いだすには至っていなかった。なので、本書でことの次第が判明し納得すると同時に、胸がすくように感じた。しかし、まあ、それにしても理不尽な話だ。ここに書かれてあることが真実であるならば、笙野頼子は某評論家によって貶された文学を、たったひとりで守っていたようなものだ。自らをデビューさせてくれた出版社から追われてまでも。
帯にある印象的なフレーズを引用したい。
批評はどこへ行った。
そのとき評論家は何をしていたのか。
まったくだ。評論家はこのとき一体全体、何をしていたのか、と。けれども沈黙を守っていた評論家の気持ちも分からないでもない。本書に収録されている評論を読んでも、本書の装丁を見ても、本書の値段を見ても、笙野頼子はとにかく大上段な性格に見える。ちょっと与するには難しそうなのだ。損な生き方かもしれないが、それは同時に魅力でもあり、一読者からすれば喝采を送りたくなるほど格好いい人だ。本書を紹介してくれたなっちゃん(id:natume_yo)に感謝を。もにょ姉(id:akikonomu)は未読でしたら、是非どうぞ。
感想リンク→夏目陽