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1138『介護入門』

介護入門

介護入門

 素晴らしい
 第98回文學界新人賞受賞作にして第131回芥川賞受賞作。実に素晴らしい

 介護入門 一、《派遣介護士の質は、人間の質である。その質を見極め、我慢がならぬ時には、強く出てまともな人材を要求すべし。低劣な介護士は、介護の助けになるどころか、さらなる厄介の種で自宅介護者を苦しめる。「他の人がもっとひどかったら」との不安が英断を鈍らせることはある。しかし、次にもっとひどい介護士が来た場合、その介護事業者自体が低劣な業者と心得よ。「『介護入門』にはそう書いてあったが、貴社はそのような業者のひとつか?」と脅すもよし。別の介護業者の選択を考え、下調べするなら居所も名も明かさずぼやかし、電話にて現状を相談めかして持ちかけよ。但し早合点せず、一度の電話で事を決めず、慎重に運ぶべし。営業担当者は口先で商売をするものだからだ。故意の物的損害、あからさまな手抜き行為に対しては法的手段にて訴えること。被介護者の虐待など言語道断、警察を呼ぶか、自ら牢屋に入る覚悟なら相手を殺傷するもよし、但しその場合も、被介護者の身を何より第一と心得よ。(後略、太字引用者)》
43〜44ページより

 ラップを意識した文体と何処かで見かけたような気がするが、この文体はラップと言うより、向井秀徳。まさにMATSURI STUDIOからMATSURI SESSIONを経てやって参りましたとでも言うかのようなテンションなのだ。そして開いた手の平が最早「へえ、ビール瓶の口をきれいに斬れるから手刀って言うんだ」と言わせてしまうほどの斬れ味。参りました。秋山完敗。傑作