雲上ブログ〜謎ときどきボドゲ〜

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1146『Y』

Y

Y

 まずは五秒、次は十五秒、その次は三十秒、そして一分、最後には三分。自分が過去に戻っていることに気づいた男は、十八年前の事故を思いだしてしまう。もし、あそこまで戻ることが出来たら……アルファベットのYのように、右と左とに分岐してしまいもう二度と交わらない、人生のもう片方を見ることが出来るのではないだろうか。
『ジャンプ』を読んだときも感じたことだが、佐藤正午は読者の気持ちを熟知している。抜群のストーリィテリングで、読者の気を引き、物語内世界に引きずり込みながら、肝心要のところでいきなり寸止めしてくれるのだ。その技巧が憎いと同時に、あまりに上手く決まっているので思わず溜め息が出てしまう。