2006-10-25 1146『Y』 Y作者: 佐藤正午出版社/メーカー: 角川春樹事務所発売日: 1998/10メディア: 単行本 クリック: 2回この商品を含むブログ (19件) を見る まずは五秒、次は十五秒、その次は三十秒、そして一分、最後には三分。自分が過去に戻っていることに気づいた男は、十八年前の事故を思いだしてしまう。もし、あそこまで戻ることが出来たら……アルファベットのYのように、右と左とに分岐してしまいもう二度と交わらない、人生のもう片方を見ることが出来るのではないだろうか。 『ジャンプ』を読んだときも感じたことだが、佐藤正午は読者の気持ちを熟知している。抜群のストーリィテリングで、読者の気を引き、物語内世界に引きずり込みながら、肝心要のところでいきなり寸止めしてくれるのだ。その技巧が憎いと同時に、あまりに上手く決まっているので思わず溜め息が出てしまう。