雲上ブログ〜謎ときどきボドゲ〜

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1156『東京公園』

東京公園

東京公園

 カメラマン志望の主人公は公園で家族の写真を撮るのが好きだ。あるとき彼は「ベビーカーを押して幼い娘と散歩している妻を尾行して、写真を撮って欲しい」と依頼される。晴れるたびに毎回、異なる公園に足を伸ばす親子を、主人公はファインダーから覗く。
 絶妙な距離感と言えるだろう。妻がどうして公園を訪れるのかという謎が物語を緩やかに牽引しつつ、性格のいい主人公と気の置けない家族や友人たちとの生活が描かれている。帯には恋愛小説と謳われているけれど、ちょっと違うと思う。これは、ううん、陽だまりのような暖かさを楽しむ小説。恋愛でも青春でも成長でもなく、風景、もしくは写真、いや日常――違うな、人生。そう、人生を楽しむような小説だ。素晴らしかった。傑作選入り
 小路幸也に関しては、もう少しペースを落としてもいいかなと思う。この調子で続けていけば、いずれ必ず直木賞を受けるから、年に二冊のペースで構わないだろう。