- 作者: 吉田修一
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2004/10/01
- メディア: 文庫
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第127回芥川賞受賞作。途中まではそのあまりの地味さに「これがどうして芥川賞?」と首を傾げていた。何故って、よくある日常のいっときを切り取ったような小説なのだ。部分部分に納得するものはあれど、これといった展開はなく、淡々と日常が進む。しかし、ある科白を読んで疑問が氷解した。
以前、「どうしてみんな公園に来るんでしょうね?」と近藤さんに尋ねたことがある。近藤さんは珍しく真剣に考えあぐねていたのだが、「ほっとするんじゃないのか」とあっさりと言ってのけた。捻りのない回答だったので、返事もしないで済まそうとすると、「ほら、公園って何もしなくても誰からも咎められないだろ。逆に勧誘とか演説とか、何かやろうとすると追い出されるんだよ」という。
衝撃的な科白である。公園が何のために存在するのか、どうして人は公園を訪れるのか。今まで、考えもしなかった。何もしないことをするために行くだなんて。一度、本を閉じ、『パーク・ライフ』という題名を見て、確信した。これは中々に上手く作られた、素晴らしい小説であると。