雲上ブログ〜謎ときどきボドゲ〜

オススメの謎解き&ボードゲーム&マーダーミステリーを紹介しています

1184『ルート225』

ルート225 (新潮文庫)

ルート225 (新潮文庫)

 弟を公園まで迎えに行ったら、パラレルワールドに紛れ込んでしまった。こっちの世界では、友だちでなくなったはずの大久保ちゃんが親しげに話しかけてきて、死んだはずのクマノイさんが生きていて、ジャイアンツの高橋由伸がちょっと太っていて、パパとママがいない。
 面白かったし、これは上手くもある。パラレルワールドであることはわりと早期に明かされるのだが、そうと分かっていても主人公たちが感じる違和感や不安が、リアルな感情として伝わってくるのだ。これはきっと、著者が文学を書く人だからではないかと思う。元々は理論社のYA!シリーズの一冊として刊行された本書は、エンターテイメントして書かれており、エンターテイメント的な技法も用いられているのだが、その内実は文学以外の何物でもなかった。いや、素晴らしかった。藤野千夜の他の作品も読んでみたい。