雲上ブログ〜謎ときどきボドゲ〜

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1188『シェルター』

 表題作『シェルター』に『ベラボー婦人』に掲載された五編のショートショートを併録。
 僕の国はミサイルを撃たれるに違いない。そう思った僕は980万で個人用のシェルターを購入した。あるとき、いよいよ来るなと確信した主人公はシェルターにひとり篭もる。そして大型匿名掲示板を見た彼は驚愕する。外の世界はすごいことになっていた……!
 これは、惜しいと思った。題材の選択は完璧だろう。シェルターに独り篭もって争いごとから全力で逃避して、もくもくとインターネットの世界に浸る。この引きこもりっぷりはすごい。しかし、リアリティが欠如しているのが残念。今日の日本に、戦争なんか起こるわけがないだとか、シェルターを個人が購入するなんて馬鹿げているといった類のリアリティではなく、仮に本当に戦争の恐怖を予期し、シェルターを購入した男がいたとして、その男が感じる恐怖や不安に付随するリアリティだ。彼は、もっと、疑うのではないだろうかと思う。名無しさんの書いた情報や、テレビで放映されている情報をもっと疑い、シェルターに閉じこもってしまった自分は、もはや生の情報を手に入れられないのだと、また仮にシェルターの中にいなくても生の情報は元々、手に入れられていなかったのだと。最後が安易なエンターテイメントに陥ってしまっていたのも残念。途中までは最高に面白かったのだけれど。