雲上ブログ〜謎ときどきボドゲ〜

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1193『Melbourne1』

 第五回文学フリマにて頒布された同人誌を遅ればせながら読んだ。ちなみにサインを貰ったときに少しだけ会話を交わしたのだが、福永信長嶋有は本当に親切な方だった。その丁重な物腰と穏やかな口調からひととなりが感じられた。
柴崎友香「レッド、イエロー、オレンジ、オレンジ、ブルー」難解だった。読者になんの説明もなくいきなり物語が始まって、登場人物の紹介もなく物語が進むので、どういった状況なのか想像もつかなかった。が、まあ、それは意図的にやっているのだろうと、主人公たちの日常っぷりを楽しむことにした。読者に親近感を感じさせる文章だった。
長嶋有「オールマイティのよろめき(2nd flight)」傑作。飛行機に偶然、乗り合わせた三人の男を主人公としており、窓側の男→真ん中の男→通路側の男→窓側の男、とそれぞれの男を順々に淡々と描写しているだけの作品なのだが、そこはかとない面白味があるのだ。どうしてか。座っている位置やそれぞれの性格によって彼らは別々に行動しているのだが、たまに彼らの思考は一致する。たとえば食事が配られたとき、フォークが金属製でナイフがプラスティック製であることに気づいた彼らは(なるほど、テロ対策か)(じゃあ、フォークは危険ではないのか)(フォークは危険じゃないのか)と同時に思うのだ。こういうところが面白くて仕方がなかった。「オールマイティのよろめき(1st flight)」は『文學界』2005年01月号に掲載されたらしい。読みたい。
福永信「ずっと五分間」ABCDの四人を主人公とした、超短編集というような。Aの話だけでもそれなりに完結しているが、BやCの物語を経ることで、どんどん世界観が完成されてゆくという構造。中々に面白かった。
中原昌也「舞台動物」なんだか負の方向に特化したリアリティがあるように感じられた。確かに現実にこういう事態に直面したら、こう行動する……かも……しれな…………うーん、どうだろう。不思議なインパクトがあった。