雲上四季〜謎ときどきボドゲ〜

本と涙と謎解きと、愛しさと切なさとボードゲームと

500文字の心臓「第67回タイトル競作:間に合わない」

 少し前ですが、第67回タイトル競作「間に合わない」の集計結果が出ました。
 秋山の応募した超短編は、正選と逆選とを一点ずつ頂戴いたしました。
 以下、応募した作品。

 彼女の悲鳴が聞こえた。
 ぼくは目を覚ます。真っ暗な部屋に、録画中を意味する赤いひかりが見える。リモコンを手にとる。電源を入れたが、テレビはすぐには明るくなれない。「これからおやすみになる方も、そしてお目覚めの方も……」ただ、キャスターの声だけが聞こえてくる。立ちあがると目眩がしたが、無視してジャケットに腕を通す。急がなくては。家を飛びでて自転車に飛びのって、未明の街を漕ぎはじめる。まだ月は明るい。いくつもの建物が折り重なって、地面に不気味な影を描いている。ようやく閉店した飲食店から、ごみ袋を担いだ男が出てくる。その頭上でカラスたちが相談している。三十メートル先、信号が黄色に変わり、ぼくは加速する。見える範囲に車はいない。と思ったのに角からやってきたトラックにぼくは轢かれる。自転車がひしゃげ、宙に舞う。ぼくは電柱に激突しそうになったが、うまく足を繰りだしてそれを蹴り、その勢いを使って空を飛ぶ。冷たい朝の空気に包まれる。身が凍えるが彼女のことを考えると寒くない。電車よりも早く飛び、ぼくは江ノ島に辿りつく。波間を探すが彼女の姿は見えない。ぼくは絶望に打ち震える。しかし、顔を上げると彼女がサザエを食べているのが見える。彼女はにっこり笑う。ぼくも笑う。

 ふと思い出しましたが、雲上四季は、元々、雲上私記だったんですよね。それを、超短編置き場にしようと思って雲上四季としたのです。が、やがて日記に戻って、感想置き場になって、今また日記に戻りましたね。