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蒼ノ下雷太郎『地獄は終わらない』


地獄は終わらない
オンライン文芸マガジン『回廊』第11号所収


作者:蒼ノ下雷太郎
分量:原稿用紙25枚
発行日:2007年6月15日
発行元:文芸スタジオ回廊

 賽の河原にて、石の塔を積み重ねることを命じられた主人公。たった七つ、石を七つ積むことができればこの地獄から解放されるらしいが、せっせと三途の川から石を持ってきても、途中で鬼に石を粉砕されてしまう。苦労しては石を持ってきて、積み重ねては、粉砕される。果てしない作業に身を粉にしている主人公はある日「助けてくれ」と泣きすがるおじさんと出会う……。
 ブラック・ユーモアを取り入れた幻想小説。ではあるのだが、語りはライトだし、作中に描写されている賽の河原という舞台もステレオタイプであるため幻想性は少なく、今ひとつ作品内世界に入りこむことができなかった。絶望を取り扱うのであれば、もう少し深く、もう少し重く表現されたものを読みたかった。「キミとボク、仮面人間」感想)と同じく、結末においてちょっとした反転と言うか、発想の逆転があって、それは非常に面白いのだけれど、肝心の「主人公が地獄を選んだ理由」が書かれていないため、片手落ちになっている気がしないでもない。ただid:issaiさんは「11号の中では特に好きな作品」とおっしゃっていたので、そこらへんは個々人の感性に左右されるものかもしれない。