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水池亘『そして僕は『世界』になり』


そして僕は『世界』になり
オンライン文芸マガジン『回廊』第12号所収


作者:水池亘
絵師:あらし
分量:原稿用紙60枚
発行日:2007年8月15日
発行元:文芸スタジオ回廊

 二十五年前。十四歳から十九歳までの少年少女のうち、一%は自分の脳のなかに、固有の『世界』を作り上げていることが判明した。少年はその『世界』を矛として攻撃に用いることができ、少女はその『世界』を盾として防御に用いることができた。少年少女たちが『カップル』となり戦争に投入された近未来、少女を失った少年は独りで戦場に飛びだした……。
「世界の終わり」特集に寄せられた1編。著者は第5号からずっと超短編で参加していた水池亘さん。本作品は水池さんの回廊では初の小説作品であり、近未来の戦場を舞台に、少年と少女と世界を描いたもの。やや古くさい表現を用いればセカイ系、もっと古くさい表現をすれば近未来SFファンタジィ、だろうか。しかし、ここに描かれている状況は、実に苛酷なものであり、物語の結末でくだされるある決断にまとわりついている葛藤は、他の類似作品とは一線を画すように思う。一読の価値あり。また、あらしさんによるイラストも格別。登場人物全員の紹介イラストもある。