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夏目陽『世界の果ての年代記 前編』


世界の果ての年代記 前編
オンライン文芸マガジン『回廊』第12号所収


作者:夏目陽
分量:原稿用紙70枚
発行日:2007年8月15日
発行元:文芸スタジオ回廊

 北の最果てにあるという〈世界の終わりの村〉。すべてが灰色に覆い尽くされたその村を訪れた旅人は、そこで双子の姉妹と出会った。双子は語る、〈世界の終わりの村〉がここまで荒廃した理由、その理由。そして彼女らは旅人を案内する、〈世界の終わりの村〉のさらに北にある〈世界の終わり〉へと。旅人がそこで見た〈世界の終わり〉とは? そして〈世界〉とは……?
「世界の終わり」特集に寄せられた長編の前編(後編は10月15日発行予定の第13号に掲載予定)。著者の夏目陽さんid:natume_yo)は幻想文学をこよなく愛し、小説やそれを書くことに非常に自覚的な方。この作品でも、病的なまでに客観性が重視され、実に濃厚でリアリティ溢れるせかいが描かれている。特に白と灰と黒からなる〈世界の終わりの村〉の描写は見事の一言。文字と文字の間から、忘却と消失の静謐が漂ってくるのが感じられるぐらいだ。