日下三蔵がゲストだった回に参加して面白かったので、今月も参加してきました、SFファン交流会。今回は評論家の森下一仁を招いて2007年に発表されたSF作品を回顧しつつ、星雲賞候補作について検討するといった趣きでした。
資料として日本長編短編・海外長編短編のSF作品リストが配布されたのですが、作品の網羅っぷりが凄まじく、スタッフの苦労が窺い知れました。リストで特に興味深かったのは日本短編のリスト。国内SFの短編は『S-Fマガジン』と『SF Japan』の他に『異形コレクション』を読めば大体、制覇できるようですが、他のと同じ扱いで『小説すばる』掲載作もリストアップされていたのが興味深かったです。昨年は『小説すばる』の他に『野性時代』と『ミステリーズ!』もリストされたそうですが、やはりノンジャンル小説誌のなかでいちばんSFに近しい作品を掲載しているのは『小説すばる』であるらしいです。
総評としては、SFか否かを決める境界のぶれがさらに進行したものの、面白い作品が増えたこと。星新一関係の評論・アンソロジィ・イベントが多く再評価が進んでいること。円城塔がデビューしたこと。などが大きい出来事だったそうです。個人的に驚いたのは最後のひとつ。円城塔の登場は確かにSF業界だけでなく、文学やミステリからも注目されましたけれど「事件」と呼ぶほどのものだったのかと思いました。
最初に総評を述べた後は、森下一仁を中心に参加されていたSF読みがそれぞれ印象に残った作品を挙げて、それぞれについて軽く語られました。とりあえず挙げておこう、という感じで挙げられた作品も中にはありましたが、やはり印象に残っているからこそ、こういう場で取り上げられるわけで、どの作品もそれなりにパワーのある作品なのだと思います。以下、一覧。タイトルに誤記がありましたら、ご指摘いただけると幸いです。
長いので続きを読むのなかに入れておきます。
- 日本長編
- Self-Reference ENGINE
- シオンシステム
- MM9
- 虐殺器官
- ジャン=ジャックの自意識の場合
- 時砂の王
- 進化の設計者
- 押川春浪回想譚
- 有頂天家族
- 零式
- ミノタウロス
- 超妹大戦シスマゲドン
- 人類は衰退しました
- 鯨の王
- サマーバケーションEP
- 敵は海賊・正義の眼
- 図書館革命
- プリズムの館
- 日本短編
- Boy's Surface
- Your Heads Only
- 次の著者に続く
- 羊山羊
- 陽根流離譚
- 蝉とタイムカプセル
- 口紅桜
- The Indifference Engine
- 球形世界
- 渦の底で
- 静寂に満ちていく潮
- 金のなる木
- 馬と車
- 超鋼戦士カタダキクオ最後の戦い
- 沈黙のフライバイ
- クラーケン
- 延長コード
- 洗濯日和
- 復帰
- いばら姫
- 暴落
- 海外長編
- 海外短編
解説や感想を聞きながら思ったのは、国内にせよ海外にせよ、長編よりも短編の方が面白そうだということです。秋山が短編を志向しているからか、それとも短編の方が魅力を説明しやすいのかは分かりませんが、長編と比して読みやすいというのもありますし、今年は『SF Japan』を購読してみようかなと思いました。年に3回の刊行なら充分に追うことのできるペースですし。
来月は2007年のSF漫画やSFアニメを回顧するそうです。