先日、横浜で見た柳家喬太郎の一席が、とても良かったので、映像作品はないのかなあと探したところ『映画 立川談志』を見つけたので、早速、見てみました。
- 出版社/メーカー: 竹書房
- 発売日: 2013/05/02
- メディア: DVD
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シネマ落語&ドキュメンタリー
内容としては立川談志の半生を振り返りながら、ときにインタビュー映像や、家族との生活シーンを入れつつ、落語としては『やかん』と『芝浜』を収録しています。
インタビューは特に「イリュージョン」に関するくだりが多めで、立川談志の落語観が見えます。
とにかく難しい
前半は、とにかく難しかったです。
立川談志の考える落語とは何なのか? 実際に見てみよう、というナレーションに導かれるように『やかん』が始まるのですが、これが、さっぱり分からない。
「はあはあ、そういう物語なのね」
と思いつつ聞き入っていて、そろそろ落ちかなと思っていたら、なんか落とさずに違う話が始まったりして、
「え? えっ?? 終わったの? 今、『やかん』終わったの? もしかして、違う話が始まったの? ありうるのそんなこと??」
もう、マジ意味不明っすよ。目が点です。
イリュージョンとは……
そして始まるインタビューにおける、イリュージョンの連呼。
もう、ほんとうに、さっぱり分からず、ポカーンとしていました。
芝浜は良かった、最高に良かった
ドキュメンタリーパートの中で印象的だったのは、人情噺に対する否定、と言うか距離の置き方。
「嫌い」と名言しつつも、立川談志の代表作とも言われる『芝浜』を、どのように語るのか、最初は好奇心が前面に出ていましたが、いざ始まるとものすごい引き込まれました。ものすっっごい引き込まれて、引き込まれて、最後のあたりは半泣きでした。
いや、素晴らしい。
素晴らしく良い話でした。
「よそう。また夢になるといけねえ」
このフレーズで一席が終わると同時に、涙腺が決壊して、テレビに向かって拍手しました。いや、最高に良かったですわ。
『芝浜』ほんとに良かった
いや、もう何度でも言っちゃいますけれど、ほんとに良かったです。
これは『芝浜』が良かったのか、立川談志の『芝浜』が良かったのか、立川談志が良かったのかは、ちょっと分かりませんが、とにかく最初の『芝浜』が、立川談志の『芝浜』で良かったです。恵まれている、と感じました。
逆に『やかん』は訳が分からなかったので、聞かなかったことにしておきます。ファンの方には申し訳ないですけれども。
女房の造形
『芝浜』の話ばっかりですみませんね。
観終えた後、あまりの良さに呆然としつつ、Wikipedeiaを見てみたんですよ。そうしたら、
「実は大金を拾ったのは現実だった。あたしが嘘をついた」と、最後に衝撃の告白をする女房。この女房をどのような人物として造形するか、これも重要である。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%8A%9D%E6%B5%9C
自堕落な亭主を見事に更生させる、立派な女房として描かれる場合がほとんどである。それを聴き手は「実に偉い女房だ」「これこそ文句無しに素晴らしい夫婦愛だ」と賞賛する。しかし、この演出法に対しては、「わざわざ更生させるために嘘をついてやったのだ、と言わんばかりで、その偉ぶり具合が鼻につく」として嫌う意見もある。
これとは正反対に7代目立川談志の型では、告白の時に「騙して申し訳ない」と心から謝罪して涙を流す、偉ぶらない女房として造形する。反骨家の談志らしいアンチテーゼといえる。
ひええええ、となりました。
女房の造形が異なったら、物語の印象は百八十度、異なりそうです。
いったいどうなっちゃうのでしょうか。もし、立川談志のではない『芝浜』を先に見ていたら、自分の中での『芝浜』は、ぜんぜん違った位置づけだったかもしれません。
いや、落語、面白いですねえ!
落語家によって同じ話でも、ぜんぜん違うわけですね!
俄然、盛り上がってきましたよ。落語の世界に、もっと! 触れたい!!