10年以上ぶりに読み返しましたが乙一の『夏と花火と私の死体』が、非常に新鮮で、非常にスリリングで、非常に面白かったです。ネタバレします。
- 作者: 乙一
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2000/05/19
- メディア: 文庫
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確かに角川から発行されていたライトノベル系の雑誌『ザ・スニーカー』に「暗黒系 Goth」が掲載されていたのです。これが面白かったので、まずは角川スニーカー文庫から出ていた『失踪HOLIDAY』、『しあわせは子猫のかたち』、『きみにしか聞こえない』を読んでいて、そのハートウォーミングで切ない……を通り越して、胸を抉られる通称、白乙一に心の底からときめいたのです。
そして、『死にぞこないの青』と『暗いところで待ち合わせ』を経て、遡り、デビュー作の『夏と花火と私の死体』に着手したのですが、思わず頭を抱えましたよ。そして、
「これが、黒乙一か!」
と叫びながら、のたうち回り、『天帝妖狐』、『石ノ目』と読んでいきました。『天帝妖狐』については、JUMP j BOOKS版と集英社文庫版と、わざわざ読み比べたような気もします。
ただ、秋山にとっての乙一熱とでも言うべきものは、『GOTH リストカット事件』、『ZOO』、『失はれる物語』でいくらか落ち着いてしまい、『銃とチョコレート』、『死者のための音楽』、『The Book』を最後に追うのを止めてしまいました。
止めた、と言うか2008年に社会人になってから、少し読書から離れてしまったのがきっかけですかね。
閑話休題。
冒頭にも書きましたが、ほんとうに久々の再読だったので、内容は完全に忘れており、もうほんとうに初めて読むつもりで読みました。
だから、落ちがブラックであることに、純粋に驚きました。緑、誘拐犯だったのかよ! って言うか、主人公もカゴメカゴメやってるし、全員、狂ってるじゃん!! みたいな。
この作品、何が良いんですかねえ。落ち着いて考えてみるとよく分かりません。等身大の子どもを描いた、上質な犯罪小説、というところでしょうか。中盤、死体が見つかりそうで見つからないスリリングな展開も、悪くはないですけれど、やっぱり、最後の結末に向かってすべての伏線が収斂していくところの美しさですかね。
これを16歳が書いたと思うと、今さらながらに「ひえ~」ってなりますね。