Bitaby(ビタビィ)の山中麻未さんによる『旅するゲームブック ウィーン』を遊びました。
オーストリアのウィーンを疑似体験できる一冊で非常に気に入りました。以下、絶賛が続きます。
作品の概要
オーストリア、ウィーンの街を旅するゲームブック。プレイヤーの選択肢で、観光する行き先が変化します。カフェや美術館、歴史的な建築や遊園地など数百の選択肢の中からお気に入りの場所を見つけて、ウィーンの地図を作りましょう!旅には複数の分岐があるので、何度読んでも楽しめます。
https://www.bitabywork.com/items/25920072
1ページ目から順番に読み進めるのではなく、主人公の行動を読み手が選択し、断片化されたパラグラフを行ったり来たりするようにして読み進めるゲームブック。
多くのゲームブックは、冒険小説的な内容で、プレイヤーは危険なダンジョンを探索する冒険家を追体験したり、怪しい館を調査する探偵を追体験したりします。
この作品『旅するゲームブック ウィーン』は、そんなゲームブックの形を取った、体験型の旅行記だと感じました。
作者は武蔵野美術大学を卒業された後、ゲーム会社に入社された山中麻未さん。現在は、ボードゲーム製作等に携わっていて、ボードゲーマー的にはニューゲームズオーダーから発売された『パトロネージュ』のアートデザイン担当と言えば分かるかもしれません。
作品の感想
旅行が好きです、特にヨーロッパが好きです。
ヨーロッパで最も訪れたのはドイツ、次いでフランスですが、いちばん好きなのはイタリアです(食べ物的にはスペインかもしれません)。
次はイギリス、その後はオーストリアかチェコに行きたいなと思っていたのですが、コロナの影響で今年は見送らざるをえないなと感じています。
旅行記は好きですが、いわゆるガイド本は、あまり読みません。
結局、美しい風景や建築物よりも、それらを包む空間のうちに自らを置いてどう感じたか、現地に生活している人々を見て、自分がどう感じたか、そちらの方に興味があるからです。
その点、この作品は絶妙としか言いようがなく、
・読み手の選択で、次どこに行くかを選択できる。
・訪問した先の様子を写真入りで見ることができる。
・ちょっとした知識を得ることができる。
・ガイド本には載らないような些細な気付きや発見が共有できる。
完璧じゃないでしょうか?
まさしく求めていたものです。
付属の地図も、良い味を出しています。
当初はゲームブック内で訪れることができる場所と、対応するパラグラフ数が記載されているだけで、その場を訪れたら地名を書き込めるようになっています。
本に書き込む習慣がない方にとって、実際に書き込んでいくのには抵抗感を覚えることでしょう。
私も、なるべくなら傷つけずに読みたいですし、買った当初の状態で保管したい派です。ふつうのゲームブックを購入したときも、ステイタスを管理するためのシートは、コピーしたものを使ったり雑紙を活用しますし、そもそも背表紙に折り目が残らないよう、本を135度以上広げることはないです。
ですが!
今回は「書き込むという体験を得よう!」と割り切って、鉛筆で書き込んでみたのですが、これが予想以上に良かったです。
と言うのも、手を動かして地名をメモることで、自分がその場所を訪れたのだという実感が得られますし、訪れた場所同士の距離感が、リアルに伝わってくるのです。
もし、地図に地名を書き込んでいなかったら、カールス教会はカールスプラッツ駅の目の前にあるのだという実感も得られなかったでしょうし、ベルヴェデーレ宮殿は森の近くにあるのだという肌感覚も得られなかったでしょう。
是非、臆さずに書き込んでいただき、そしてウィーン旅行を心から楽しんでいただければ幸いです!
一緒に遊んだぺこらさんとの対談。
終わりに
非常に良かったので、是非、第2弾、第3弾と続けて制作していただきたいなと思うと同時に、この手の本は経験や記憶だけで書けるものではなく、確認や勉強、調査も必要になるものですので、続けざまに出すのは難しいことでしょう。
ずっと追いかけていきたい所存ですので、時間が掛かるかもしれませんが、是非、継続してがんばっていただきたいと強く願います。