19世紀にヨーロッパで大流行した遊びの世界を紹介する書籍『西洋アンティーク・ボードゲーム 19世紀に愛された遊びの世界』を読みました。
面白い本だったので少し紹介させてください。
本の内容
著者のエイドリアン・セビル氏は、印刷製版されたボードゲーム文化の研究家。膨大なコレクションを持つと同時に、ヨーロッパおよびアメリカで講義を行ったり、展覧会を開催するなど幅広い活動をされています。
本書は氏のコレクションをまとめた美術書であると同時に、89の作品紹介となります。
本の感想
想像していたものとは少し異なりました。
西洋のボードゲームということで、『チェス』がメインになるかと思いきや「印刷製版されたボードゲーム」というところがポイントで、主に紹介されていたのはダイスを2つ振って出目の分だけ駒を進めて、あがりを目指す『がちょうのゲーム』に代表される、いわゆる絵双六でした。
実際に紹介されている89種の大半は『がちょうのゲーム』もしくはその亜種で、それ以外ではギャンブルゲームの『ふくろうのゲーム』が8種ほど、そしてこのどちらにも属さないゲームは10作もなかったです(つまり、ほとんど『がちょうのゲーム』の紹介!)。
と言うわけで『チェス』を中心に、幅広いボードゲームを学べるのかと思いきや、ひたすら様々なバリエーションの『がちょうのゲーム』の盤面を鑑賞することになり、ちょっと期待していた体験とは異なりましたが、その分『がちょうのゲーム』の多様さや発展については深く学べたので良かったです。
せっかくなので『がちょうのゲーム』を紹介させてください。
最古の歴史としては15世紀イタリアにさかのぼります。当時、このゲームを禁じる法律があったことから、流行していたことを証明しています。
16世紀末にはフランチェスコ・デ・メディチが、トスカーナのゲームとしてスペイン国王フェリペ2世に贈呈したことが残っています(トスカーナはイタリア中部の州、フィレンツェやピサがあります)。
上述の通り、基本的にはダイスを2つ振って、出目の分だけ駒を進めて、最初に63のマスを踏むことを目指します。タイトルが『がちょうのゲーム』なのは、9の倍数のマスが、出目の2倍進むことができるラッキーなマスになっており、そこに鳥のがちょうが描かれていたためです(がちょうは、イタリアで幸運の鳥)。
いくつかイベントマスがあります。6番には橋、19番には宿屋(1回休み)、31番には井戸/52番には牢屋(別のプレイヤーが止まるまで手番が飛ばされる)、42番には迷路(後ろへ戻る)、そして58番には死神(ふりだしに戻る)。
これらは人生における転機を表現しており、より宗教的なデザインの版では劇的に描かれており、学習や販促のためのデザインでは相応のイラストに差し替えられています。
また、上がりが63ではなく、もっと少なかったり、100くらいのものもあります。
ある意味、いちばん肝心なことですが、このすごろくゲームは賭け事に用いられていたようです。
まあ、そうですよね。
法律で禁止されるくらい流行ってるということは、酒場で遊ばれたり、お金が賭けられたりしますよね。
ギャンブルという観点では、ここでは長くなるので紹介しませんが『ふくろうのゲーム』の方が、よりギャンブル要素が強いなと感じました。
イタリアのサイトですが、こちらでは様々な版が紹介されており、個人利用の範疇で楽しむことができます。
本を買うほどではないけれど、少しだけ見てみたいという方は、ぜひアクセスしてみてください。
終わりに
期待していたものとは異なりましたが、その分『がちょうのゲーム』には精通することができたように思います。
私自身、トランプのコレクターで、トランプの様々な意匠を見るのが好きなので、様々な『がちょうのゲーム』を集めているエイドリアン・セビル氏の気持ちには共感を覚えます。素敵な本でした。