雲上ブログ〜謎ときどきボドゲ〜

オススメの謎解き&ボードゲーム&マーダーミステリーを紹介しています

第32回『文学フリマ東京』参加レポート

f:id:sinden:20210517132046p:plain
 5月16日に開催された、第32回『文学フリマ東京』に雲上回廊として、サークル参加しました。
 まったく写真を撮らなかったので、文章メインになりますが、ぽつぽつ書くことにします。

はじめに

 確認したところ、最後に、わたし自身が手配して文学フリマに参加していたのは、2018年5月6日に開催された第26回『文学フリマ東京』でした
 文学フリマに参加したのは、青山ブックセンターで開催されていた第2回からで、サークル出店を始めたのは会場が秋葉原に移ってからの第3回からです。以後、記憶にある限り、休むことなく参加しつづけ、大阪、金沢、札幌、岩手、福岡、京都、前橋にも第1回開催のおりは遠征参加していました。
 特に、真剣に活動を始めたのは、名古屋に転勤した直後だったので、2013年11月の第17回です。その後、雲上回廊として活動しつつ、2015年5月からは『文学フリマガイドブック』の編集長に就任し、さらに意欲的に活動しました。
 転機になったのは2016年4月で、名古屋転勤が解除となり、東京勤務に戻りました。自由にできる時間が激減し、2014年9月から始めていた『ゲームマーケット大賞』審査員としての活動も忙しく、2018年5月の第26回を以って、いったん立ち止まってしまいました。
 ほんとうは2020年には復帰予定だったのですが、コロナ禍の影響もあり自粛し、第32回を迎えた今回、3年ぶりの参加となりました

第32回『文学フリマ東京』の感想

 コロナ対策ということで、ともすれば過剰とも感じられる施策に従いながら入場し、設営を進めました。
 お隣は並木陽さんの銅のケトル社、そのお隣は上住断靱さんの大坂文庫。


3年ぶりだけど、ぜんぜんアウェー感がない! むしろ、勝手知ったる感しかない!


 すばやく設営を終え、開場までの間、添田さんと近況を語り合いつつ時間をつぶします。
 そして、開場時間、代表の望月さんが館内放送で挨拶を始めました。「我々は反社会的な行動を取っているわけではありません、国・都の方針に従い、その範疇で活動をしています」という声明が印象的でした
 会場の外には一般参加者で行列ができていたようですが、アルコール消毒や体温測定等の対策を取りつつの入場だったので、いくらか時間を要したようです。ブースからは、ぽつぽつと、しかし絶え間なく参加者がやってくるなという印象でした。


 3年という年月は区切りになる期間です
 学生は社会人になり、独身は既婚者となり、夫婦には子どもが生まれる
 人生の節目は多くの時間リソースを要求し、心身ともに疲れるそのタイミング、同人活動をつづけるのは困難なことです。午後になってブースを離れ、会場を見てまわりましたが、一変しているように感じられました。


 買い物は7000円ほどしました。
 全体的に低価格化が進んでいるなと感じました
 秋葉原時代、コピー誌や手製本はまだまだ多く、オフセット印刷となると安いもので1000円、だいたい1500円以上の値付けでした。当時の同人誌印刷所はB5判の薄い本をターゲットにした印刷所さんばかりで、大量のページ数を持つ文芸同人誌は少数派でした。
 蒲田時代を経て、東京流通センターに至るころには、小説向けパックが台頭しはじめ、1000円以下の値付けができるようになりました。
 しかし、原価で本を売ることは、極めて閉鎖的な趣味の域を出ないと感じていました。多少なりとも黒字にしないと長く続かない。社会人になったり、結婚したり、子どもができたタイミングで「時間がない」を言い訳に活動を終えてしまう。そうしてしまうのは、あまり惜しい才能が多く、わたしは原価で本を売ることには否定的な姿勢でした。600円でも売れる本に、さまざまな付加価値をつけ1000円の値付けをして、書店や流通に卸し、仕切りを払っても赤字にならない価格で努力しました。
『文学フリマガイドブック』の活動においても「紹介した本の売上を伸ばすこと」を意識して、「ガイドに掲載されたことで完売したから、増刷しました」という声を励みに走りました。
 わたしの姿勢は商業的だと批判する方もいらっしゃって、「俺の文学はそうじゃない」とおっしゃる方もいらっしゃいました。
 3年ぶりに参加して、わたしに詰め寄ってきた方は、もうサークル出店しておらず、そして全体的に低価格化は進んでいるように感じられました


 いい意味で肩のちからが抜けたかなと思います。
 ひとにはそれぞれに創作意欲があり、自由にできる時間の多寡があり、文芸に対する姿勢、想い、熱量は異なります。価格は安くてもいいし、高くてもいい。そこに絶対的な指針はなく、敢えて言えば本人が良ければ、なにもかも許される。そう感じました。
 文学フリマに参加していなかった3年間、まったく創作していなかったわけではありません。『修道院はどこに消えた?』『ループ探偵の憂鬱』『白猫はどこに消えた?』『水平線に沈むアリア』『終わりから始まるクロニクル』を制作し、現在は『大富豪を殺したのは誰か?』の制作が佳境を迎えています。特に『白猫はどこに消えた?』はISBNコードをつけていただき「書店で秋山真琴の作品を買うことができる」という夢のひとつを叶えていただきました



 持ち込んだ『終わりから始まるクロニクル』は、ありがたいことに完売しました。ラスト1時間くらいで最後の1部をお買い求めいただいたので、ちょうどよい持ち込み部数でした。
 3年を経て、出店者が変わり、参加者も変わりましたが、文学フリマは相変わらず居心地がよく、素敵な場所でした。
 空間を維持することに全力を注いでくださったスタッフの皆さまに、厚く御礼申し上げます。

終わりに

 次回、第33回『文学フリマ東京』は11月23日開催。
 あまり気負わず、ふわっと参加予定です。どうぞ、よろしく。