シリーズ23作目にして、ダニエル・クレイグがジェームズ・ボンドを演じた3番目の作品『007 スカイフォール』を見ました。
ネタバレありで感想を書きます。
人間性を感じられない男ボンドの成長
冒頭、先んじて潜入し、負傷していたエージェントの手当てをしようとした007を見て、少なからず衝撃を受けました。
と言うのも、今までの007は、今ひとつなにを考えているか分からない男で、ターゲットもあっさりと殺してしまうし、ひとの生死に頓着しない存在に見えていたからです。
しかし、手当てをしようとする007に対し、Mはハードディスクを優先しろと冷酷な指示をくだします。かのエージェントはMに見殺しにされたのです。
そして、ハードディスクの奪還を目指し、列車のうえで肉弾戦を繰り広げた007もまた、Mに見殺しにされることになりました。
表裏一体の存在との対決
『カジノ・ロワイヤル』のル・シッフル、『慰めの報酬』のグリーンと比べ、今回の敵であるシルヴァは因縁の敵と言えます。
かつてMの配下に所属し、優秀なエージェントとして活躍したものの、最後は見捨てられて、死んだものと思われていた男。彼がMに復讐するために帰ってくる、というのが筋です。
かつての部下と今の部下、そして共に一度は見捨てられたものがある者同士、シルヴァは言うなれば、ありえたかもしれない007というわけです。
暗黒面に落ちたヴィランと現ヒーローの対決という構図を感じさせます。
スコットランドの曠野──スカイフォール
ボンドが幼少期を過ごした地を舞台に繰り広げられる決戦は、圧巻でしたね。
館を爆破させるという贅沢な予算の使い方はもちろん、在りし日の自身との決別、Mとの別れ、盛りだくさんでした。
スカイフォールという地名もいいですよね、今にも空が落ちてきそうな、この世の終わりのような渺々とした様が映し出されていました。
終わりに
Mの死は残念でしたね。
最初は、ハードディスクの価値が分かりませんでしたが、あそこには各地で潜入工作中だったエージェントの情報が詰まっていたのですね。それを奪還するためなら、手持ちの駒のひとつやふたつ、犠牲にするのも分かります。
最後まで厳しくも、自身の責務を果たそうとしていたMの心中を想うとこみ上げてくるものがあります。