浅倉秋成のミステリ小説『六人の嘘つきな大学生』を読みました。
非常にパンチのある作品で感動したので感想を書きます。ネタバレはしていません。
あらすじ
成長著しいIT企業「スピラリンクス」が初めて行う新卒採用。最終選考に残った六人の就活生に与えられた課題は、一カ月後までにチームを作り上げ、ディスカッションをするというものだった。全員で内定を得るため、波多野祥吾は五人の学生と交流を深めていく(後略)
https://www.kadokawa.co.jp/product/322005000377/
LINEをモチーフとしていると思われるスピラリンクス社の新卒採用に臨む、6人の大学生を描いた群像劇的な作品です。
このミス8位、本ミス4位、文春ミス6位、早ミス8位と平均して高い評価を得ています。
感想
いやはや、感動しました──。
一部あらすじを引用しましたが、本書は波多野祥吾を主人公に、とあるIT企業の就活戦争を描いた作品です。彼の考えや、彼というフィルターを通して描かれる、最終選考に残った他の5人は、それぞれが夢を持っており、この就活戦争に勝ち抜くことを、そして社会人として成長し、羽ばたいていくのだという高い意識を持っています。
一人称で語られる描写や、他の学生たちとの会話は初々しく、なんだか微笑ましく見えてしまうのは、きっとわたしにとって就活が10年以上前のことだからでしょう。
その一方で不穏さもありました。
タイトルがタイトルですからね。
快活そうに見えるスポーツ男児も、優秀そうに見える美女も、そう見えているのは綺麗に作り上げた偽りの仮面で、その奥には真っ黒なドロドロがあるのかもしれません。
暴かれる様を見たくないと思う自分と、早く真実が知りたいと思う下世話な自分の間で揺れ動きながらも、スタートの合図が鳴ったのは想定していたよりも序盤のうちでした。
ひとつ真実が明かされてからの展開は、怒涛でした。
次から次へと謎が提示されては真実が明かされ、そして、またさらに謎が……ぜんぜんページを繰る手を止められないうちに最後まで読み切ってしまいました。
正直、この結末は、まったく予想していませんでした。
中盤以降、このタイトルと、このあらすじでは想像できない地点を迎え、これっぽっちも失速しないまま結末まで駆け抜けるのです。
ジェットコースターのように翻弄されました。
そして最終ページの最終行を読み終えたとき、冒頭に書いた感想に辿り着きました。
終わりに
非常に好みの作品でした。
読みはじめる前は、やや不安があったのですが、ほんとうに素晴らしい作品だったので、もっとさらに広まってほしいなと感じました。
心からオススメです。