雲上ブログ〜謎ときどきボドゲ〜

オススメの謎解き&ボードゲーム&マーダーミステリーを紹介しています

空港を貸し切った一夜限りのオンライン演劇『夢路空港』の感想


 ノーミーツによるオンライン演劇『夢路空港』を観劇しました。
 非常に素晴らしい作品だったので感想を書きます。

作品の概要

 小松空港を貸し切り、深夜24時からリアルタイムで配信されたオンライン演劇です
 空港中にカメラが配置され、役者はそれぞれに移動しながら、移動先で出会った人物とやりとりする群像劇的な作品です。

演劇なのか? 映画なのか?

 今まで何度もオンライン演劇を見たり、録画された演劇作品を見てきましたが、この作品ほど「いま、見ているのは演劇なのか? それとも映画なのか?」と自問自答したことはありません
 わたし自身、演劇の人間でも、映画の人間でもないので、面白ければオールオッケーという姿勢ですが、演劇ないし映画に関わっているひとであれば、本作のような境界線的な作品は、非常に居心地を悪く感じると同時に、どう解釈したものか悩まれるのではないでしょうか
 それとも、演劇にせよ、映画にせよ、既にこのレイヤーの問いかけは議論され尽くされており、とうの昔に終わっているのか……どちらかというと、業界の状況の方が気になります。


 個人的な感覚では、本作は演劇です。
 本作は編集が介在できないリアルタイム配信ですし、カメラは固定されておりズームアップ等もされていません。カメラは切り替わりますが、これは言ってみれば場面転換です。実際の演劇においても背景の大道具を変更することで、場面転換が行われることがありますし、それが瞬時に行われたと解釈できます。
 演劇なのか映画なのか、思わず判断に迷ってしまうような挑戦的な、境界線的な作品は、好きです。

時計は没入感をさまたげる

 わたしは先行販売期間中にチケットを購入したのですが、そのときの公演時間は60分であったように記憶しています。
 24時から配信が始まり、25時が近づくにつれ、


え、これ、後○分で終わるの? 大丈夫なの??


 と、何度も時計を確認してしまいました。
 25時を過ぎても、いっこうに終わる気配がなく、別タブで公式を見に行ったら、いつの間にか公演時間は70分となっていました。
 サイレント修正されたのか、それとも自分の記憶違いか……ある種の安心感を覚えましたが、それも束の間、すぐに25時10分が迫り、再び、


相変わらず、ぜんぜん終わる気配がないんですけどーっ!


 と、内心、叫んでいました。
 結果、閉幕を迎えたのは25時半過ぎ、公演時間は90分ほどでした。
 ラストはけっこう感動的な展開だったのですが、残念ながら乗れませんでした。
 これが映画館もしくは劇場であれば、時計を確認する余裕がなく、時間が押していることに気づかず、最後まで幸せに見ることができたと思うのですが……時計がチェックできてしまうというのは、オンライン演劇ならではの弊害ですね

複数舞台による役者同士の非連携

 アフタートークを見ると、本番にあたってけっこうアドリブがあったようで、それが時間超過の原因の様子です。
 思ったのは役者同士の非連携です。
 一般的な舞台であれば、出番の役者さんも袖から見ているでしょうから、今なにが起こっているか、誰がどれくらいアドリブをしていて、お客さんの反応がどうなのか肌で確認できます
 しかし、オンライン演劇の場合、客の反応は見られませんし、今回ケースで言うと、場面が複数あるので、役者さんは自分のシーンの直後、離れた場所で行われている演技を見ることはできません
 こういった要素が絡み合ってアドリブが増え、時間超過に繋がったのかなあと感じています。

圧倒的なリアル感

 やや苦言めいた表現になったかもしれませんが、振り返って考えると時間超過は良かったことのように感じられます
 何故って、本作は一夜限りの公演で、一回しか上演されませんし、一回しか見られないからです
 こういった要素……というか、すべての要素を以ってひとつの作品になるわけで、そのひとつの作品にリアルタイムで触れることができたのは、この上ない幸せなことです。
 いずれオンライン演劇は、もっと洗練されるでしょうし、こういった形式の作品も増えるかもしれません。しかし自分は荒削りであっても新しい作品が好きなので、あの夜、居間で、ひとりで、静かに見ることができた時間は何よりのものでした。

終わりに


 主演のジャルジャルに興味を持ったので、後日、YouTubeでいくつかコントを見させていただきました。『嘘をつき通す奴~ピザ~』『国名分けっこやる奴』『リモート面接でめっちゃふざける奴』は以前に見たことがありました。
 けっこうヤバい奴と普通の奴のやりとり、みたいな構図が多いですね。日常に潜む狂気、みたいでどれも面白かったです。

【追記】虚構が現実を侵す宣伝手法

 本作を語るうえで、忘れてはならない存在を、ついうっかり忘れていました。
 久地々Pです。
www.youtube.com
 この動画は『夢路空港』のメイキング(?)動画として公開されたもので、本作への意気込みを語る久地々Pが想いを熱弁しています。
 わたしは、この久地々Pなる人物を知らなかったので、この動画が公開された当初、見ることはしなかったのですが、公演後にようやく久地々Pが虚構の存在であることに気付きました。
 その正体は、ジャルジャル後藤淳平が演じるヤバいディレクターな奴、彼らの過去のコントに登場するキャラクターのひとりです
 つまりメイキング(?)動画の、(?)は「ネタですよ!」を示している(?)だったわけですね。
「ネタなのだとしたら見てみよう」と思って見てみたら、まさしく普段のジャルジャルのコントそのもので、特に、前田敦子がジャルジャルの世界に巻き込まれる第2回は面白かったです。
www.youtube.com
 この久地々PはYouTubeにいるだけでなく、Twitterにも存在しています
twitter.com
 ちょうど『夢路空港』が発表される直前、2月24日にアカウントを開設し、活動を開始しています。
 当時は「へえ、今までTwitterをやってなかった、崖っぷちDが『夢路空港』で起死回生の一手を打つためにTwitterをはじめたのか」くらいにしか思いませんでしたが、分かった状態で見れば番宣の一種です
 演劇の宣伝では、本番前にキャストのひとりひとりを紹介する動画があげられることが多いですが、本作では、この久地々Pが紹介するというスタイルです。また、ノーミーツの岩崎裕介さんとスペースをやっていたりもします。


 掘れば掘るほど面白いというか、ゲームの世界で言うところのARG的な手法とも受け取れて、ノーミーツさんの物語に掛ける挑戦的な姿勢に感動します
 惜しむらくは本番前に久地々P=ジャルジャル後藤淳平だと気づけなかったことでしょうか。この茶番めいた番宣を、公演前にコンテンツとして楽しむことができたのですが……一瞬でも動画を開いていたら虚構であることが分かっていたと思うので、残念でありません。
 長くなりましたが、最後にもうひとつ。
 久地々PのTwitter投稿のなかで、いちばん気に入っているものを紹介させてください。