雲上ブログ〜謎ときどきボドゲ〜

オススメの謎解き&ボードゲーム&マーダーミステリーを紹介しています

相棒物という独自ジャンルを追求『バディミッション BOND』の感想(ネタバレなし)


 2021年にコーエーテクモゲームスからリリースされたゲーム『バディミッション BOND』をMission3まで遊びました。
 まだまだ全然途中なのですが、感想を書くことにします。

遊んだきっかけ

 この記事を書いている、今まさにこの瞬間がそうなのですが、Nintendo Switch Online加入者であれば無料で遊ぶことができる「いっせいトライアル」に本作がノミネートされました。
 結果、普段は7128円のソフトが、月額306円のサブスクリプションに入るだけで遊びたい放題になります。
『バディミッション BOND』はコアなファンが多く、推理アドベンチャーの近作を調べている、必ずオススメされる作品で、ずっと気になっていました。この機会に遊ぶしかない……! そう思って着手しました。

Mission3クリアで続けるのを止めた理由

 しかし、Mission3クリアを以って、わたしはプレイを続けるのを止めました
 面白くなかったわけではありません
 ここは声を大にして主張しておきたいのですが、むしろ面白かったです。
 ばっちり好みでしたし、360度どの角度から見ても傑作以外の何者でもありませんし、なるほどコアなファンがおすすめし続けるのも深く納得です。
 それでも、いったんプレイを止めたのは、シンプルに時間です


 聞くところによると、本作はいったんクリアするのに30時間、コンプリートするには50時間かかるそうです。
 わたしは、ひとより文章を読むのが遅く、また声優さんのボイスはせっかくなら聞きたい派なので、余計に時間が掛かります。推理パートでも攻略サイトは見ず、なるべく自分のちからで解き明かしたい派です。
 下手をするとクリアするのに40時間、コンプリートに70時間ほど要してもおかしくないでしょう。
 そう考えると、とても5月5日18時の、いっせいトライアル期限まで間に合いません。


 考え方を切り替えることにしました。
 本作は、小説で言うところの連作短編もののように、複数の章立てで構成されています。
 マンガで言うならMissionひとつが、単行本1冊に相当するイメージです。
 睡眠時間を削って、一気に読破するのも楽しいでしょうが、わたしのスタイルとしては1日1冊ずつ、時間をかけて楽しんでいく方が合っています
 面白かったのにプレイを止めることにしたのは、これが理由です。いっせいトライアル期間中に無理して遊ぶのではなく、期間限定で体験版を配信して貰ったと解釈して、時間をかけて遊ぶことにしたのです

相棒物の魅力

 と言うわけで、ここからはMission3までしかやっていないものの、それでも感じ取った本作の魅力を、すこし語らせてください。
 まず、最初に明らかにしておきたいことは、王道一直線であることでしょう。
 意表を突くためだけに残酷なシーンを入れたり、読ませ続けるためだけに強引な引きを入れたり。そういう不自然な描写は、まったくの皆無です。最初から最後まで、徹頭徹尾、お約束に忠実で、どこにも居心地の悪いポイントのない、ある種の平成的な作品です
 これが、ほんとうに落ち着くんですよね。
 衒いがないので、ともすれば飽きがちなのですが、それでも夢中になって遊んでしまうのは、演出の妙でしょうか
 マンガ的と言うか、自然にぐいぐい読ませる表現なので、まったく飽きずに永遠に触れていられるんですよね。
 ただ、これは本作の本質ではないと思っています。


 本作の魅力、それはタイトルにも表されている通り、相棒物(バディ物)を、とことん追求していることでしょう


 正直、わたし自身、相棒物というジャンルの魅力を自覚していませんでした。
 本作を遊びはじめたときも、腐敗して汚職にまみれた警察にいながらヒーローを夢見る青年と、粗野と乱暴という言葉を具現化したような悪党がコンビを組むのは面白い。その程度の感覚で遊びはじめました。
 しかし、Mission2の中盤、ある一枚絵が表示された瞬間に気付きを得ました、あるいは思い出しました。
 普段からどんな作品に触れても、どちらかというとストーリーや世界観に魅力を覚えて、キャラクターに対しては愛着を覚えられない自分ですが、ことキャラクター同士の関係性という点においては、グッと感じるときがあることを。


 わたしにとって相棒物の原体験は、島田荘司の御手洗潔シリーズにおける御手洗潔と石岡和己、有栖川有栖の学生アリスシリーズにおける江神二郎と有栖川有栖、京極夏彦の百鬼夜行シリーズにおける中禅寺秋彦と関口巽です。
 あるいは、ここに挙げた諸作品の向こうには、アーサー・コナン・ドイルによる、シャーロック・ホームズとジョン・H・ワトスン博士の存在があるかもしれません。
 卓越した推理力と引き換えに失われた生活能力と人間性を持つ探偵役──そして探偵を補佐する立ち場でありながら読者と同程度あるいはそれ以下という知性を運命づけられた助手役。
 この、それぞれが共に単独だとてんで駄目だけれど、タッグを組んだときに何倍ものちからを発揮する
 こういう関係性が、わたしにとって特に好物で……、
 そして本作『バディミッション BOND』は、まさしくこのバディを組むことによって最強になるという関係性を、とことん深掘りした作品でした。面白くないわけがありません

終わりに

 4人の主人公のひとりであるチェズレイ・ニコルズは、未だ登場すらしていませんし、物語全体で言うと、まだまだプロローグと言えるでしょう。
 でも、それでも充分に面白いと確信しましたし、傑作となることが約束されている、そう感じました。まだ、いっせいトライアルの期間は残っているので、気になっている方は是非。5月12日まで30%Offのセールも開催しています。