雲上ブログ〜謎ときどきボドゲ〜

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体験要素をガン盛りした新しいリアル脱出ゲーム『追憶のハロウィンからの脱出』の感想


 SCRAPが『名探偵コナン』とコラボしたリアル脱出ゲーム『追憶のハロウィンからの脱出』を遊んできました。
 ネタバレには配慮していますが、気になる方は回れ右推奨です。

ゲームの概要

 SCRAPは毎年『名探偵コナン』とコラボした新作リアル脱出ゲームを発表しています。
 ここ数年は、その年の劇場版を意識した内容になっており、今年は『ハロウィンの花嫁』を意識して、ゲストキャラとして安室透と高木渉が登場。
 プレイヤーは1チーム6名のチームを組み、高木渉が回想する過去の事件を追体験しながら謎を解き明かします。

ゲームの感想


 過去最高に体験感を強く覚えたリアル脱出ゲームでした
 SCRAPは謎解き業界の最大手で、業界を牽引する存在でありながら、謎解きらしからぬゲームイベントも数多く発表しており、ある意味、自分たちで切り開いた世界を、自分たちで破壊しているのでは? という見方もできます。
 飽きるほど謎解きを遊んできたわたしが、それでもSCRAPの公演に通いつづけているのは、この意外にチャレンジングな姿勢が好みで、最近だと『魔法少女まどかマギカ』とコラボした『ワルプルギスの夜からの脱出』が特に画期的でしたし、昨年のコナンコラボだった『緋色の捜査網からの脱出』も異色の出来栄えでした。


 本作の特徴のひとつは「配役付きチケット」の存在でしょう。
 このチケットを購入すると、受付時に特別な役割が与えられ、公演のエキストラとして参加する権利が得られます
 チケットを買うタイミングが遅くて、気づいたときには配役付きチケットは、ずいぶん先まで売り切れてしまっていたので、ふつうに遊びましたが、ちょっとした台詞が与えられるので、演劇的に関与できる楽しさがあると言えました。


 しかし、それ以上に強く感じたのは、自分自身が物語世界の内側にいるという感覚でした。そして同時に、自分以外のプレイヤーも物語世界にいることを意識しました。


 従来のリアル脱出ゲームを表現するキーワードのひとつに主人公体験というものがありました。
 プレイヤーは制限時間60分というゲーム時間=公演における主役にして主人公として謎を解き、物語を進めることができました。
 チーム内の他メンバーは仲間ですが、他チームの存在は見えない存在として扱います。
 一方、本作の場合、同じ回に参加している他プレイヤーは、自分と同じくこのゲームイベントに参加しているプレイヤーとして可視の存在である。彼らも自分と同じように主人公なので、仮にその回の参加者が60名とするならば、60人の主人公が群像劇的に存在すると言えます。


 体験感がある、と上述しましたが、これは主人公体験感ではありません
 どちらかというと物語世界に没入する感覚に近く、イマーシブシアターに近い印象です
 公演を終えた後、帰り道において初めてイマーシブシアターという概念に触れたときのことを思い出しました。そのときわたしは「イマーシブシアターは日本では流行らないな」と感じました。
 感覚として、日本人は客としてもてなされること、主人公として恭しく扱われることを求めており、観客をその他大勢として扱うイマーシブシアターとは相性が悪いと考えたのです。
 当時は、まだイマーシブシアターをよく理解しておらず、エンターテイメント、公演、演劇、ゲームに対する考え方も煮詰まっていませんでした。
 この頃に考えていたことを再び思い出したのは、本作の在り方が従来の一般的なリアル脱出ゲームとは、やや異なるからでしょう。

オリジナルグッズ


 今年はコナン脱出10周年ということで、例年よりも多めのオリジナルグッズが作られていました。
 写真は10周年を記念して作られたジグソーパズル。今までのイラストが一望できるもので、かなり手応えがありそうですし、楽しそうです。
 この日は荷物になるので、いったん見送りましたが悩みます……。

終わりに


 非常に考えどころの多い、興味深い公演でした。
 求めていたものかと問われるとやや首を傾げますし、『コナン』である必要があったのかと問われると、さらに首を傾げますが、触れることができて良かった公演としては間違いありません。
 体験型コンテンツに興味のある方は、絶対に体験すべきでしょう。