雲上四季〜謎ときどきボドゲ〜

本と涙と謎解きと、愛しさと切なさとボードゲームと

現代+日本+異種族との交流=異種格闘技戦アンソロジー


 文学フリマにて、SKIPJackの古川さんからいただいた『Crossing.』を読みました。
「現代」「日本」「異種族との交流」をテーマとした三題噺で、さらに各作者がデザインしたキャラクタを、他の作者が実際に小説するというなんとも実験的なアンソロジィです。当初はなにも知らずに読み始めたのですが、途中で“天狗”というフレーズが漫画を除く最初の3編に共通して現われていたので「もしかしたら、天狗がテーマの本なのかも」と奥付を探してみたら、そちらにこの本の主旨が書かれているのを見つけました。以下、寸評。
日暮海亜「カクシモノ」現代日本を舞台に、天狗との交流を真っ向から描いた作品。巻頭に相応しい作品と言えるでしょう。伏線をしっかり張って、しっかり回収している点において、この長さの短編を書きなれているなあと感じました。
クサカベアヤ「レンタル神様」面白かったです。このアンソロジィで1作選んでくださいと頼まれたらこの作品を挙げます。願いをひとつ叶えてあげます系のアイデアを、レンタル神様というかたちに落とし込んだのが実に秀逸。青春における淡い恋心もよく描けていますし、クサカベアヤさんの普段とは違った一面が垣間見れました。
高崎滋「影法師 a silhouette」漫画作品。やはり小説のアンソロジィには1作は、漫画作品があるといいですね。落ち着きます。
椋岡成美「天狗箇月の災い」これは少し難易度が高かったです。漢字の使用頻度が高かったり、改行が少ないことから、真面目に書いている節も見える一方で、内容そのものはどう見てもギャグで、ちぐはぐな印象を覚えました。少し、言葉に振り回されているような。
桜井ゆき「243」これも難易度が高かったです。場景を思い浮かべることができず、何処までが現実で何処からがSFかも分からず、困窮しました。しかし、文章にリズムがあって、なんとなく最後まで読むことが出来ました。もう少し分量を増やせば、だいぶ落ち着くように感じました。
古川「bring her up」これは凄かったです。日本に帰化した40歳以上のイタリア系アメリカ人のトニーノ(男)と結婚した大久保啓太(男)が、額から角を生やしている鬼の女の子を、養子として迎え入れるという物語なのですが、様々な葛藤が実によく描けているように思いました。設定それ自体も、非常に難しいものながら、なんとか書ききろうとしている姿勢が見え、とても好印象。唯一のネックは短さでしょうか。アンソロジィなので分量を望むのは無理かもしれませんが、もう少し腰を落ち着けて描いていたら凄まじい傑作になっていたような気がします。
 次の頒布は、11月18日に開催されるコミティア82にてだそうです。は21bのfuca、は35bのパプリカパーク、ひ11bの文芸処・椋岡にて頒布されるそうなので、もし足を伸ばされる方がいれば是非。オススメですよ。