雲上ブログ〜謎ときどきボドゲ〜

オススメの謎解き&ボードゲーム&マーダーミステリーを紹介しています

1-02-01から1ヶ月間の記事一覧

PSYCHO READING

すっかり酔いが回り、足許が覚束なくなっていた。当然、いきなりにやってきた自転車を避けられるわけもなく。衝撃に吹き飛ばされ、視界は暗転した。 気がついたとき、視界は四角に区切られ、世界は縦に細長くなっていた。身体は少しも動かせず、視界を上下左…

PHOENIX

「行け、紅蓮の鳳よ。薙ぎ払え」 魔法使いの手元、開かれた書物が突然の強風にあおられたようにページがざわめきだち、そのうちの何枚かが、飛びたつように千切れて虚空に舞いあがった。かと思うと、それらは中空で鳥のかたちを為すと、焔の鱗粉を散らして戦…

ENGINE AND RYDEEN

炎神はブルルと身体を震わせると、カッと目を開き、その身を打ち付けていた雨粒を蒸発させ、毛の先に至るまでを瞬間的に乾かせた。 炎神は風雨の吹き荒れる海岸に立っていた。騒めく海上には、雷神が牙を剥いて威嚇していた。その青白いたてがみは、ときおり…

CORRUPTION

沈んでゆく、沈んでゆく。闇の中を沈んでゆく。 そこは底なし沼、終わりなき旅。いつまでもどこまでも、延々と、飄々と、どこまでもどこまでも、いつまでもいつまでも。沈んでゆく、沈んでゆく。 嘲笑と罵声をBGMに、落ちゆく自分を俯瞰する。 腐れきった…

DA CAPO

夕賀恋史は顔を上げて壁に掛かっている時計を見た。針が指し示していた時刻は、彼が頭に思い描いていたものと全く同じだった。握りしめていた拳を解きはなち、彼は部屋を出た。 屋敷の間取り図は既に頭に入っていた。夕賀恋史は一片の迷いすら見せず、最短距…

PEACE MAKER

海上移動図書館《ピースメーカ》は凪いだ海上を漂っていた。潮風は微塵も吹いておらず、さざ波ひとつない海面は限界まで研磨された鏡のように、静謐を保っていた。 《ピースメーカ》には書物と、それを快適な状態に保存するための設備しか積まれていないので…

SPECTACLE TOWER

陰鬱な暗がりから暗がりへと。塔の中は薄暗かった。外は曇っているのか、窓から月明かりが差し込むことはなく、ただ湿った風だけが吹き込んでくる。手にしている蝋燭から、蝋が滴りおちる。ポタリポタリと、まだ熱を持っている混濁した白色は橙色の灯火の下…

FLOOD OF STAR LIGHT

空から降ってきた一万の爆撃が、夏目草薙から故郷を奪った。 草薙はかつて自身が住んでいた土地の入口に立って、見渡す限りの荒野と、地平線まで見渡せてしまうその事実に失笑した。「まったく、とんだお笑い種だ」肩を竦めてから、草薙は額に巻いていたバン…

NEW YORK

未完成の都市。 その都市にある建築は、日夜、成長を続けている。仮にホテルの最上階に部屋を取ったとしても、朝を迎えたときにその部屋が最上階のままであるとは限らない。誰が工事をしているという訳でもないのに、その都市の建築物は、いつの間にか増築さ…

COMIC

『犯罪予告状』 今年、千二百個の密室で、千二百人が殺される。誰にもとめることはできない。 密室先生。 出来上がった文面を見て、密室先生は淡く微笑んだ。既に千二百人を密室で殺すための計画は完成していた。後は、それを実行に移すだけ。犯罪計画書は五…

SET THE BOOK ON FIRE

ありとあらゆる書物の後書きを集めた後書き集を作ったならば「後書きに何を書けばいいか判らない」という作者のぼやきがあるものは、かなりの数に上るだろう。そう、後書きに何を書いていいか判らないあまり、その作者は後書きで自らの弱点を晒し、弱音を吐…

ANY WHERE

かつて、何処でもない何処かへと旅した旅人がいた。旅人は誰も知らない何処かを求め旅を続けていたが、旅人が訪れる何処かは、どれも誰かが知っている何処かであった。 ある時、旅人は誰もが知る何処かへと漂着した。旅人はそこで今まで誰も知らなかった音色…

THE MOON ON THE WATER

もし……世界が反転したら? 他の皆が地球に立っていられるのに対し、自分だけが逆らいたくもないのに重力に逆らって上下さかさまに立ってしまったとしたら? 気がついたとき、私は吊り橋の下にいた。見上げれば穏やかな水面、私が立っているのは山なりにカー…

UNDER GROUND

この都市はあまりに多くのものを、皮膚の下に隠している。 雨の痕が汚らしく残ったコンクリートの道路。その両脇を固めているのは、真っ白なペンキがまぶしい洒落たブティックやコーヒーショップ。きれいな振りをしているけれど、ペンキの下にはどす黒い陰謀…

RIGHT HANDED

コーヒーに垂らしたミルクをスプーンで掻 書くことは、果たして攪拌と言うのだろうき をは判らないけれど。コーヒーがいい具か混 前か砂糖を入れわすれた。カップをお合。ぜ 名う、こに隠れていたのだね。改め皿にしな の違ばこる。充分に溶けきったとてに冷…

WALK ALONE

一郎は次郎の頭に灰皿を振り落とした。その光景を、メアリは見ていた。 「メアリは勘違いをしない」館の主は、厳かに言った。「メアリは人間にしか見えないが、人間ではない。機械だ。先だって私がメアリに居間に残っている人数を訊ねたときのことを覚えてい…

BATTLE#4

「ようこそ。世界の屋上、忘却の彼方、仇討の戦場へ」 「時の君……」 ふたりの人物が相対していた。しかし、そのふたりは、ふたり共、「人物」と形容するのが果たして正しいのかどうか、その判断に困るぐらいに「人物」らしくなかった。双方ともに一瞬ごとに…

SKY WALKER

「不思議だ」「謎だねえ」「不可解だ」「理由が判らないのよね」「意味深だ」「なんでだろうねえ」 休日、犬の散歩をしていたら学校の友人二名と鉢合わせた。 「なにやってるの、ふたりとも」「ん……ああ、あの家なんだが、ちょっと見てくれよ」「あそこに扉…

SAMURAI DRIVE

刀を鞘から抜いたその瞬間から、躰を包む生温かい酩酊感。 視界の隅を緋い花が舞い散り、そこが戦場であると錯覚する臨場感。 この魔剣を使いこなせるのは、この世で自分しかいないのだという責任感。 失敗すれば、誰よりも先に己が血が吸われるという危機感…

HIMA

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A BLAST OF WIND

少女の名前は風。 遠い昔、旅人に名付けられて以来、少女はただの空気という存在なきものでありながら、名前を持つ存在になっていた。少女はその、風に吹かれれば飛んでしまうような、淡い理性で考える。自分自身のことや、眼下の大地のことや、そこに暮らす…

THE STARRY EXPANSE OF THE SKY

酔いを醒まそうと熱気に満ちたパーティ会場からテラスに出てみれば、先客がいた。頬を朱に染めて、星空を眺めているのはうら若い貴婦人だ。 「こんばんわ。失礼でなければ、ご一緒してもよろしいかな」 私の気配に気づかなかったのは、貴婦人は驚いたように…

WHO WITCH

欧州において森とは、奥深く、薄暗く、入れば迷う、魔界のような空間として認知されている。魔女は森の中に住み、森の中には地獄への抜け道があり、一寸先の見えない人生は森に喩えられている。 その森にひとりの老人が住みだした。 老人は魔法使いを自称し…

THE BRINK OF TIME

転がる死体を前に、私は覚悟を決めなくてはならなかった。 素直に罪を認め警察に自首するか、何らかの隠蔽工作を働き罪から逃れるか、それとも――第三の選択肢、私の掌中にあるこの遠い未来の遺産を使うか。 遺産……私の掌の上を転がるそれは、白く艶やかに、…

LOVE WILL RING

親愛なる蓉子嬢へ。 この手紙を君が手にしていると言うことは、私は既にこの世にはいないということだ。 なんて、ありきたりな言葉で切り出してみたがどうだろうか、驚いているかね? 実を言うと、他の誰でもない私自身、驚いている。絶えず人とは違うことを…

AKITUKI MAKOTO

皓い部屋。円柱の底辺。完璧なる円周率。精緻な建築。硬質的な壁。高い天井。大理石の模様。隙間のない空間。密室。詰まる息。居心地の悪い設計。穢れている空気。見かけだけの美的感覚。非人間的な計算式。座り心地の良さそうな椅子。独りきりの女性。黒い…

PERIOD

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CAMOUFLAGE

極薄のマイクロチップが埋め込まれた産業廃棄物の前に立った清掃員は、その規格を調べようと屈みこんで、手首に嵌めているリーダをマイクロチップに近づけた。瞬間的に読み込まれたデータが、清掃員の体内を走っている有線に乗り、その頭脳にあるデータを伝…

BANKRUPT

銀行に命を預くと、交通事故や地震などの突発的な事態に巻き込まれたとき、抵抗力が減じているため死にやすくなる。しかし、トラブルにさえ巻き込まれなければ利子の分だけ長生きすることができる。それに命を高額で買い取ってくれる好事家も、裏の世界には…

KATANA

カチリカチリカチリ、歯車が刻む、時を刻む。喰い違う切れ込みが螺旋を磨き、滲み寄せる空間に音が弾き、カチリと音を立てる。右回転と左回転、反時計回りの歯車が連動し、螺子を逸らし針を跳ね、カチリカチカチカチリカチと時を刻む。 殺伐屋はしばらく懐中…