雲上ブログ〜謎ときどきボドゲ〜

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PHOENIX

「行け、紅蓮の鳳よ。薙ぎ払え」
 魔法使いの手元、開かれた書物が突然の強風にあおられたようにページがざわめきだち、そのうちの何枚かが、飛びたつように千切れて虚空に舞いあがった。かと思うと、それらは中空で鳥のかたちを為すと、焔の鱗粉を散らして戦場へと飛んでいった。
 炎の鳥が、敵陣の一角を打尽した。
 兵士は空気の中に溶け込むようにして蒸発して、後にはプスプスと煙を上げる、黒く焼け焦げた大地だけが残った。
「これが大魔導か……凄まじい魔法だな」
 魔法使いの背後に立っていた将軍が、感嘆の声を上げる。
 その声に対する応えなのか、魔法使いは哀しげに首を振った。次の瞬間、再び魔法使いの手元の書物が脈動し、何枚かのページを吐きだした。今度のそれらは、何かのかたちを取るでもなく、バラバラに先ほど炎の鳥が薙ぎ払った戦場へと飛んでいった。
「……むっ」
 将軍がうめいた。大地の焦げ目から、本の紙と同じ色の骸骨がワラワラと出てきたのだ。
「これが大魔導……その真髄」
 魔法使いが呟いた。彼の目線の先には、最前までは敵兵であったものたちが、骸骨の姿となり、かつての母国へと剣を向けていた……。


『不死鳥の喰宴』494文字