雲上ブログ〜謎ときどきボドゲ〜

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1092『“文学少女”と死にたがりの道化』

 ちょっと期待していたものと異なっていた。
 もう少し、こう、安楽椅子探偵的と言うか、文科系女子的と言うか、灰色狼的と言うか、そういうのを想像していたのだ。だって、口絵に、

これだから文学少女は油断がならない。
頭の中が文学してておよそ現実的じゃないから、
目を離すとなにをしでかすかわからない。
平気で他人を巻き込む。

「文学してて」なんて文学を動詞として使う離れ業をやってのけているのに、作中の“文学少女”とやらはわりと繊細さの欠片もなく活発的で、その口から語られる文学論は抽象的で、まるで誰かの受け売りのような――。おっと「秋山は文学少女に幻想を抱きすぎではないか」と言われそうだが、抱いているに決まっているじゃないか。文学文学、文学最強。
 とまれ、そういう訳でキャラクタ的に今ひとつ納得できず、キャラクタ小説的な読みに失敗してしまった。ストーリィとしてはどうだっただろうか。無理やりに位置づけるなら探偵役は“文学少女”と主人公の両方が担っており、けれど救済を与えているのはどちらかと言うと“文学少女”の方で、主人公の過去のトラウマは解消されたのかされていないのか微妙で。こう考えてみると、中々、ミステリ的に新しい構造かもしれない。