- 作者: 北村薫
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 1996/02/01
- メディア: 文庫
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面白い。面白いの一言で片付けてしまうのが思わず躊躇されてしまうぐらい、面白い。この面白さはちょっと危険なのではないだろうかと思ってしまうぐらい面白い。面白くて面白くて、待ち合わせの時間を遅らせてもらってまでしてしまった。面白い面白いと連呼してしまったが、この作品は、いわゆる面白がってはいけないような作品。扱っているテーマも重く、さらに読者に最終的な判断をゆだねるタイプなので、面白がるのは失礼というか、読者の風上にもおけないと思う。
シリーズ二作目なのだけれど、前作『空飛ぶ馬』よりずっと好き。収録されている作品は、どれも鮮烈で、日常の謎が本当に謎だと示されていて、しかもその解答の提示の仕方が鮮やかでたまらない。ああ、これこそ匠の技と称されるものではないのだろうか。章立てが細かく、カットバックが多いので技巧に走っている感がなきにしもあらずなのだが、それが非常にいい意味で機能している。ある種、小説を越えたとでも言うか。小説は読まないけど、北村薫は読むという人がいるらしいが、納得。これは超越している。