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蒼ノ下雷太郎『    』


『    』
オンライン文芸マガジン『回廊』第12号所収


作者:蒼ノ下雷太郎
絵師:赤いきのこ
分量:原稿用紙50枚
発行日:2007年8月15日
発行元:文芸スタジオ回廊

 ある日、崩壊した日常。兄弟の死体……母さんの死体……父さんの死体……家に死体が三つも転がっているのに、今日も主人公は学校へ行く。そうして友人とバカ話をして、日常に戻ろうとする。しかし、食堂で流れているニュースを見たときに、不快感が臨界点を突破してしまう。少年犯罪というニュースを見たときに……。
 蒼ノ下雷太郎さんの作品を取り上げるのは「キミとボク、仮面人間」(感想はこちら)と「地獄は終わらない」(感想はこちら)に続き、今回で3回目となる。前2作と同じく、今回も思春期や自意識といったものに焦点を当てた作品だが、ややいびつな構造をしている点が興味深く思われた。イサイさん(id:issai)は「不自然な独白になっている」とこの構造を、著者の片手落ちと判じたけれど、夏目さん(id:natume_yo)はそれなりに評価しているらしいし、秋山もこのトリックを「失敗」とするより「変形」と評価したいと思う。イラストに関してだが、赤いきのこさんの手によるイラストは実に素晴らしかった。扉絵を含め3点も描き下ろされているのだが、いずれも作品全体を覆う空虚さを絵で表現することに成功している。