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第一回文学フリマ金沢お疲れ様会における座談会あるいは黒瀬珂瀾インタビュー

秋山真琴:
 こんにちは、雲上四季をご覧の皆さん。文学フリマアフターでは、なんだか恒例になっている、この場にいる色んな方に、色んなことを聞いて参りたいと思います。まずは、添田健一さんが紹介してくださいました黒瀬珂瀾さんにお話をお伺いしたいと思います。黒瀬珂瀾さんは、今回、文学フリマ金沢において「歌会ワークショップ」を担当されました。今日は、どういった会だったのでしょうか。


黒瀬珂瀾
 今日のはワークショップですが、歌会初心者の方が3分の1くらいでした。まず、伝えたかったのは、歌会は実際にはどう進めるかのメソッドです。それから、最近はTwitter等で短歌が流行っていますが、自分の思っていることを発信したい、誰かに伝えたいという方が多いようです。でも短歌、短詩型の面白さは自分が発信すると同時に、他の人が何を言っているのかを読むというところにもあって、短歌の場合は十人の読者がいれば十人分の読解が生まるので、自分の読解だけが絶対のものではないと気付かされる面白さを体感してもらえれば、と。そして、自分の発信した内容は案外、人には伝わらないことにも気付かされます。読者とは、自分が意図したような内容では短歌を読んでくれない。だいたい言いたかったことの九割は伝わらない、そのディスコミュニケーションを楽しむというところに短詩型独特の面白さがあります。これは、実際に歌会をやってみないと気づかない。散文と比べて韻文は、作者の意図しなかったテクストの内容を、読者側が培養していくところにも大きな価値がある。今日のワークショップで、そこに気付いてもらえたなら嬉しいです。一首の歌に対して、人によってまったく違う意見が出るでしょ、そして、自分の歌って案外、自分が思っているようには読まれないでしょ? と。


秋山:
 では、今日、ワークショップに参加された、歌会初挑戦の3分の1の方は、その感動を得られたということでしょうか。


黒瀬:
 それは分からないけれど、面白がってはくれたと思う。メッセージ自体が自分の意図を超えてひとり歩きする面白さが短詩型にはあって、そこを味わって欲しいと思います。それが分かればどんどん楽しくなるし、自分の街に帰って、地元の友達と歌会をやって欲しい。二人いれば出来る、二人でドトールで出来る。


秋山:
 二人から!


黒瀬:
 出来るよ! ちょっと寂しいけれど。


Em.:
 今日、実際に参加しました! Em.という、しがない売り子です。今日は拝見しただけなんですけれど、自分が思っていたイメージと全然、違っていてびっくりしました。


黒瀬:
 短歌って、和服で短冊に筆でさらさらーってというイメージがあるけれど、そんなのないんですよ。テレビ局で「烏帽子をつけてください」と言われて困ったりするんですが、リアルタイムの現代文芸として、議論の場があることを理解して欲しい。(えむさんに向けて)本来であれば、輪に入って喋って欲しかったです。


Em.:
 外野だったので、皆さんの解釈に耳を済ませていました。やっぱり、自分の解釈と短歌というのは、自分の中で濾過されたものが解釈として反映されるのだなと思いました。物があって論に対する解釈と言うより、自分の中の論に対する解釈というものの方が大きいと感じました。


黒瀬:
 解釈の中に自分が出るというのは短詩型には必ずありますね。それと同時に技術論の側面もあります。てにをはの使い方で議論が沸き起こったりする場面が短歌にはある。助詞助動詞の使い方ひとつに、作者の思いや自意識の在り方が出てくるとされるわけです。それを、どれだけ読者と共有できるかを測る実験の場としても歌会がある。そういう意味で歌会というのは、幽玄の貴族の遊びではなく、アクチュアルでビビッドな言語遊戯の場でもあるんだということを、みんなに分かって貰えればうれしいです。


秋山:
 たいへん貴重なお言葉をいただきました。ありがとうございました!


一同:
 ありがとうございました!


〜〜〜〜〜(唐橋さんと共に会場を歩き回り)〜〜〜〜〜


秋山:
 唐橋さん! いました、山崎さんです!


唐橋:
 今日は金沢の地で、文学フリマ初開催ということで、私の方から、代表の山崎さんにインタビューさせていただきます。と言うわけで、山崎代表にお越しいただきました!


山崎:
 まあ、お越しいただいたのは唐橋さんの方ですけれど(笑)


秋山:
 今日は非常に参加者が多く、大盛況だったと思うのですが、山崎さんの視点で、手応えはいかがだったでしょうか。


山崎:
 正直、ここまでとは思いませんでした。東京開催、大阪開催を見てきた身としてはどれだけ入場待機列ができるか非常に不安でした。東京で開催すると第二展示場の裏まで一般入場待機列が続くでしょう。大阪では、イベントホールの前に蛇腹状に行列ができるでしょう。ところが、金沢では一般入場の待機列が出来なかったんですよ! おかしいでしょう! あれ? みたいな。最初は「あ、これ駄目だ! 失敗した! あちゃー!」って思いました。けれでもこれはただの文化の違いですね。行列はできなくとも会期中にちゃんとみなさんお越しになりました。それも、次から次に、途切れなく。


唐橋:
 確かに出足は遅かったように思います。でも、際限なく新規の方が、どんどん入ってきましたね。夕方になっても、どんどん人が来ましたね。


山崎:
 入場待機列という概念がなかったですね。


唐橋:
 もう、皆、好きなときに来る、みたいなね。


秋山:
 ちなみにトータルで何人くらい、いらっしゃったのでしょうか。


山崎:
 四百人です。


唐橋:
 これは山崎代表の想定とは、どの程度、開きがあったのでしょうか。


山崎:
 プラス百人くらいですね。


秋山:
 文学フリマ金沢では、他の文学フリマと違って、色々な試みがあったと思います。その試みのいくつかを山崎さんに聞いてみたいと……


(颯爽と近づいてくる文学フリマ東京の代表、望月さん)


秋山:
 え、時間ですか? あ、次がある? はい。では、これくらいにしましょう。では、最後に山崎さん、一言お願いします。


山崎:
 皆さん、ほんとうにありがとうございました。また、第二回も、よろしくお願いします。


唐橋:
 ありがとうございました! お疲れ様でした!