雲上四季

本と涙と謎解きと、愛しさと切なさとボードゲームと

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東京怪奇地図 (角川ホラー文庫)

東京怪奇地図 (角川ホラー文庫)

 ホラー・恐怖・幻想・伝奇とは少し違う、何処か懐かしさを感じる短編集。
 樋口一葉永井荷風鶴屋南北江戸川乱歩泉鏡花芥川龍之介……文豪の幻視した暮色蒼然とした東京が蘇える。彼らの作品を読んだことがあったり、作中にて描かれる千束吉原、本所深川万年町、千駄木団子坂といった町を、かつて歩き回ったことがあるならば、より楽しめるかもしれない。が、やはり本質ではないように思える。今はもう存在しない、失われた何かに郷愁を馳せるように、暮れなずむ夕陽を見やるように、夜中に虫の鳴き声でも聞きながら楽しみたい。