雲上四季

本と涙と謎解きと、愛しさと切なさとボードゲームと

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 えらい面白かった。
 一ページ目から柳田國男を引用し、読者をサトリや座敷童が現実に存在する伝奇空間へと誘い、人間と妖怪の間に起こった問題を解決する鎮守府審神機構(さなどころ)の一等官*1である主人公に存在感と説得力を持たせているのだ。この世界観があれば、それなりのライトノベルはすぐに書けるだろう。雰囲気としては『腐り姫』や『朝霧の巫女』だろうか。最後の一行で明かされるタイトルの本当の意味も含め、とにかく世界観と語り口が素晴らしかった。
 ジュブナイルポルノとしては、肉体的に痛々しいシーンが少ないのが好印象。全体的に羞恥系や焦らし系のSMプレイが多いだろうか。主人公が相手の心情を手に取るように理解できるサトリではあったが、露骨に感情移入するわけではなく、一歩離れた地点から冷静さを持って観察しているようなので、読んでいて気持ちが悪くはならなかった。ラストもなあなあで終わらせるのではなく、きっちり締めてくれたし、良作。

*1:さなどころのいっとうかん、略して審神官=さないち