雲上ブログ〜謎ときどきボドゲ〜

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Astral2 childhood's end

Astral〈2〉childhood’s end (電撃文庫)

Astral〈2〉childhood’s end (電撃文庫)

 幽霊を霊視することができる高校三年生、須玉明が主人公のシリーズ第二巻。ある夏の日、母をなくす前に住んでいたマンションを訪れた明は、そこで二十代半ばの女性の幽霊と出会う。二十年前に命を落とし地縛霊となった彼女は、今年で生前の自分と同い年になる娘の様子を見てきてくれと明に頼む。娘の居場所を見つけだした明だったが、彼女の口から語られた真実を知り、母親の幽霊へ怒りとかなしみを抱く。
 電撃hp25号に掲載された「花と鳥」に、書き下ろし短編「わたしの世界」「静かな海」と掌編「明の休日」を加えた連作短編集。このシリーズは、一巻の後半から面白く、そして泣けるようになってきて、この巻では全編通して面白い。鈍感でお人好しの主人公は、好感が持て感情移入もできるし、今後メインとなっていくであろうヒロインの登場回数も多かったので、より有機的になり一冊の本としての完成度が上がっているように思えた。副題のchildhood's endは、子供時代の終わりと意訳でき、失われた母親や昔の自分といったテーマが、幽霊という心霊的要素を用いることで上手く表現できている。(2003年12月・電撃文庫