雲上ブログ〜謎ときどきボドゲ〜

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ヴぁんぷ!

ヴぁんぷ! (電撃文庫)

ヴぁんぷ! (電撃文庫)

 成田良悟が描く“この世でいちばん吸血鬼らしくない吸血鬼”の物語。
 本書のあらすじを書くのは難しい。相変わらず一冊に投入するのが惜しまれるぐらいに作られたキャラクタが、ところ狭しと駆け回るのに加え、本書ではそれが順序だてて語られるのではなく、一気になだれ込んでくるので、前半までは一体何が起こっているのか、どういう物語なのかまるで見えてこないのだ。逆に後半からはようやくそれぞれの立場が見え、吸血鬼の城――にして観光地――という舞台に集まり俄然、面白くなる。とは言え、本書のメインは吸血鬼や人間同士の戦いで、つまりはそれぞれの特殊能力を駆使したバトルだけしかないと換言できないこともない。ところで本書の主人公だと思われる吸血鬼にして子爵のゲルハルト・ファン・バルシュタインの正体はちょっと面白い。中盤に明かされてしまう程度の謎なのだけれど、明かされてから表紙や口絵を見てみれば、しっかりと登場していることに笑ってしまう。「こういう小細工は悪くないね」とまあ。