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983『極短小説』

極短小説 (新潮文庫)

極短小説 (新潮文庫)

 浅倉久志の訳が読みたいと思い、積みを眺めてみたら早期に読みたいと思っていた本の中に、この一冊があったので手に取ってみた。
 端的に表現して「うん、中々」という出来であった。英語では55語、日本語では200字以内という極めて短い作品集なのだが、収録されている作品は、

(1)背景
(2)単数または複数のキャラクター
(3)葛藤
(4)結末

 という条件を突破したもので、いずれも最後の一行を読んで、思わず仰け反りたくなるような逸品ばかりだった。とは言え、中には理解できないものや、分かりやすすぎる落ちもあり、当たり外れの比率は一対二ぐらいだろうか。量産できるこの手の作品集にしては、高頻度で良作が読めたと思う。
 やや、残念だったのは実験的な作品が少なかったこと。解説に「あるふざけた投稿者が、本文の二倍の語数の題名をつけた作品を送ってきたことがある。われわれは笑わなかった。すくなくともそのときは」とあって、それまであった疑問――どうして収録作の半分以上が無難なものなのだろう――が氷解した。