雲上ブログ〜謎ときどきボドゲ〜

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1051『ふしぎとぼくらはなにをしたらよいかの殺人事件 下』

 面白かった!
 ミステリとしてどうか、アンチ・ミステリとしてどうか、奇書としてどうか、という点においては議論の余地があるとは思うが、とりあえず青春小説としては随一の出来栄えであるように思う。特に主人公が真犯人を見破った以降。まさか、こんなかたちで探偵の孤独性や苦悩が描かれるとは……心臓の鼓動があまりに騒々しくて、読み続けるのが困難に思えたぐらい興奮した。
 上巻の感想にも書いたが、本書を読んだのはめぐんさん(id:megun)が、本書のことを『黒死館殺人事件』『ドグラ・マグラ』『虚無への供物』『匣の中の失楽』に続く第五の奇書だと言っていたからという不純な動機。しかし、読んでよかった。
三大奇書を決めたのは誰だろう」「三大奇書に『匣の中の失楽』を加えた四大奇書としたのは誰だろう(清涼院流水?)」という疑問が浮かび、そこから派生し「他に五大奇書を考えている人はいないのだろうか」と思いたち、少し調べてみた。そうしたところ、どうやら五大奇書の五冊目として、京極夏彦《京極堂》シリーズを挙げている人麻耶雄嵩『翼ある闇』を挙げている人がいた。また、山口雅也奇偶』のノベルス版には四大奇書に連なる第五の奇書とまで書かれている。
 四大奇書が発表された年――『黒死館殺人事件』は1934年に雑誌『新青年』で連載され、1935年に新潮社より刊行、『ドグラ・マグラ』は1935年に松柏館書店より刊行、『虚無への供物』は1962年に第二章までしかない稿を江戸川乱歩賞に応募し、1964年に講談社より刊行、『匣の中の失楽』は1977年から78年にかけて雑誌『幻影城』で連載され、1978年に刊行――を考慮すると、1980年から現在の間に五大奇書の五冊目や六大奇書の六冊目があってもそう不思議ではないように思う。その期間で奇書と呼ぶに相応しい異様を誇った作品と言えば、即座に思いつくのは麻耶雄嵩『夏と冬の奏鳴曲』、次点で京極夏彦姑獲鳥の夏』と清涼院流水ジョーカー』。『ふしぎとぼくらはなにをしたらよいかの殺人事件』は、やはり奇書とは呼べないと思う。