雲上ブログ〜謎ときどきボドゲ〜

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1076『ヤクザガール・ミサイルハート』

ヤクザガール・ミサイルハート (竹書房ゼータ文庫)

ヤクザガール・ミサイルハート (竹書房ゼータ文庫)

 正直なところ、落胆の色が隠せない。
 元長柾木と言えば、異常なまでにアクが強く、読者を徹底的に無視し、数少ないコアなファン以外には異色作家として認知されていたような作家だったはずだ。そんな作家の書く話だ、きっとどえらいことになっていることだろう。そう、予測した。そして実際にいきなり調子がいいときの古橋秀之が見せるカッコいいアクションで始まり、さらに以下の一節で追い討ちをかける。

《球体(スフィア)は異境(ファーサイド)の技術を駆使して作り上げられた結界であり、その中心部には一機の爆撃機とそこから投下されたばかりの》<<爆弾が存在している。今から四四年前の夏、爆撃機が爆弾を投下した直後というタイミングで偶然、史上最大級の異境風(ファーサイドウィンド)が吹いたため、時空間に完全に固定されてしまったらしい。
(48ページより)

 そう、本書は核爆弾の落とされなかった広島を舞台とする、異能力を有するヤクザたちの闘争なのだ。そのことに気づいた瞬間「おお」とテンションが上がったが、そこから先、再びテンションが上がるような場面はなかった。元長柾木的世界崩壊も先鋭的過ぎる叙述トリックもなく、延々と刀持った女の子がバトルを繰り広げ、なんのどんでん返しもなく終わってしまったことに返って驚いた。『灼眼のシャナ』や《戯言》シリーズの後がまを狙ったとだけは思いたくないなあと溜め息を吐きつつ壁へ。