雲上ブログ〜謎ときどきボドゲ〜

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1114『陰摩羅鬼の瑕』

文庫版 陰摩羅鬼の瑕 (講談社文庫)

文庫版 陰摩羅鬼の瑕 (講談社文庫)

 京極堂シリーズ七作目。前作『塗仏の宴』までを初期京極による、京極堂シリーズ第一期と位置づければ、本書は京極堂シリーズ第二期の一作目。
 いたるところに鳥の剥製が置かれていることから「鳥の城」と呼ばれる館が舞台。今までに四人の妻を結婚初夜に殺害されている館の主にして伯爵の由良昂允は、探偵の榎木津礼二郎と作家の関口巽を婚礼の場に呼ぶ。しかし、榎木津は一時的に視力を失っており「他人の見た記憶を視る能力」だけが一人歩きしている状態。彼は「おお、そこに人殺しがいる」と指差すが……。
 非常に面白かった。無数の鳥がうつろな視線を投げかける不気味な城が舞台で、伯爵は過去に四人の花嫁を亡くしている儒学者。主な語り部は関口巽で、榎木津の傍若無人な振る舞いには拍車が掛かっている。作中作という扱いだが関口巽の小説を読むことができたし、関口と横溝正史の間で繰り広げられた文学談義には、京極夏彦の小説観の一端が見え興味深かった。結末に関しては途中で見抜けた通りではあったが、見せ方が端整で幻想的で、非常に美しかったように思う。中盤、中禅寺秋彦の語った薀蓄が、事件にそれほど深く関係しておらず、その点がやや残念ではあるが十二分に楽しむことができた。
 順位付けに意味はないが、『魍魎の匣』と『鉄鼠の檻』に次いで好きだ。